続く正社員不足 情報サービス業で顕著

2018年10月09日 06:32

画・続く正社員不足 情報サービス業で顕著

正社員が不足していると回答した事業所の割合が比較可能な1999年以降2番目に高い水準となった。日本を支える中小企業が生き残るために、労働者確保のための政策が期待される。

 厚生労働省が発表した労働経済動向調査によれば、正社員が不足していると回答した事業所の割合が比較可能な1999年以降2番目に高い水準となった。企業の人手不足が続いていることを示すもので、人件費の高騰や人材不足による業務の停滞など、特に中小企業に与える影響が懸念される。

 人材不足の問題は年々深刻化しており、企業も危機感を強めている。そのため2017年には多くの企業が非正規社員ではなく、正社員を雇用する企業が増加した。それにもかかわらず、18年5月に行われた帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」では正社員が不足していると回答した企業は全体の約5割に上る。通常5月は新入社員が入社した直後であるため比較的正社員の不足を感じにくい時期だが、それでも半分の企業が正社員不足を感じていることになる。厚生労働省の労働経済動向調査でも、正社員不足の企業が正社員が過剰と回答した企業を43ポイント上回るという結果が出た。

 どの業界でも人材不足は深刻だが、その中でも顕著なのが情報サービス業界だ。正社員不足と回答した企業の割合は約7割、非正社員の不足を感じている企業も約6割ある。情報サービス業界は年々市場規模を広げている一方で、専門的な知識・技術を持ったエンジニアが市場規模に比例して増加しないのが悩みの種だ。正社員不足を特に強く感じているのは大企業だが、人材不足が業務に支障をきたしているのは中小企業だ。情報サービス業界の中小企業の中には、依頼は数多くあるものの人手不足なため業務の割り振りができない会社や人材確保のために人件費を上げざるを得ない事業所も少なくない。

 人材不足に多くの企業があえぐ一方で、AIの導入やシステムの自動化により生き残りを図る企業もある。ただし設備投資には多くの資金が必要となるため、すべての中小企業が適用できるわけではない。日本を支える中小企業が生き残るために、労働者確保のための政策が期待される。(編集担当:久保田雄城)