目指すは世界最高水準の「環境性能」。官民連携で挑む、日本自動車業界の未来図

2018年10月14日 15:08

ローム チップセット

ロームが開発した、昇降圧電源チップセット。アイドリングストップ時の課題を解決し、世界最高水準の環境性能実現に貢献する。

 近年の自動車業界において、重要なキーワードになっているのが「環境性能」だ。経済産業省も8月31日に公表した「自動車新時代戦略会議」の報告書(中間整理)の中で、世界で販売する日本車について、2050年までに世界最高水準の環境性能の実現を目指すとした。1台当たりの温室効果ガス排出量を8割程度、乗用車は電動車の普及を100%と想定して9割程度まで削減することを目標に掲げている。そして、電気・水素・燃料を製造するところから走行までを含めた、温室効果ガス排出量のゼロ化、エネルギー高効率化を示す「Well-to-Wheel Zero Emission」チャレンジに貢献する方針を打ち出した。

 この実現にあたっては、電気自動車、プラグイン・ハイブリッド車、ハイブリッド車、燃料電池自動車などの普及が不可欠になるが、単純に電動化さえすれば達成できるというものではない。自動車としてエネルギー効率を高め、無駄の排除を徹底することも、温室効果ガス削減のために必要である。例えば、停車時にエンジンやモーターを止めるアイドリングストップ機能もその一つだ。

 近年、環境意識の高まりを受け、アイドリングストップ搭載車が増えているが、まだまだ課題も多い。例えば、エンジンの運転制御を電気的な補助装置を用いて行う際にそれらを総合的に制御するエンジンコントロールユニット(ECU)には、アイドリングストップ時のバッテリー電圧低下による機能不全、アイドリングストップ直後のバッテリー変動(クランキング)による誤動作を防ぐために昇降圧電源が必要とされているが、従来の昇降圧電源IC は消費電流と応答性に課題があった。

 そんな中、電子部品大手のロームが10月10日、同社のアナログ技術の結集ともいえる新発想の昇降圧制御技術「Quick Buck Booster®」(クイックバックブースター)を中心に、業界最高クラスの低消費電流と安定性能(過渡応答特性、以下応答性)を実現した昇降圧電源チップセットの開発を発表した。

 同チップセットは、昇圧機能付きの降圧DC/DCコンバータと昇圧専用ICで構成されており、メインの降圧DC/DCコンバータに「Quick Buck Booster®」を搭載したことで、性能面で優位な降圧電源の特性を損なうことなく昇降圧電源を構築することができる。この時、昇降圧電源として、消費電流を一般品比70%減にまで抑えることができるので、短時間に著しい入力電圧低下が発生するアイドリングストップなどのアプリケーションの省電力化貢献する。

 また、昇降圧電源と降圧電源の電源基板と周辺部品、ノイズ対策の共通化設計が可能となり、従来品と比べて、電源基板に関する開発工数や外付けのコンデンサを50%程度削減することができるのも大きなポイントだ。

 同製品は、10月16日から19日まで幕張メッセで開催されるCEATEC JAPAN 2018のロームブースでも展示される予定なので、業界関係者を中心に注目を集めそうだ。

 折しも、10月3日には欧州連合(EU)の欧州議会でも、域内で販売する自動車の二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに21年目標に比べて40%削減する新たな環境規制案が採択されている。自動車大国日本の復権のためにも、2050年といわず、官民が協力に連携して取り組み、世界最高水準の環境性能を早期に実現したいものだ。(編集担当:松田渡)