厚生労働省は2019年度に、最低賃金の低い地域にある中小企業を対象に、賃金引き上げに対する支援を手厚くする方針だ。時給を30円上げた企業に対してはこれまで最大で100万円の助成金が支給されることになっていたが、事業所内の最低賃金が800円未満の地方企業に限っては助成金額を最大200万円まで増やす。
中小企業の助成金額の引き上げが地方に限定された背景には、最低賃金の地域格差が広がっていることがある。今年発表された各都道府県の最低賃金の中でも、東京都が985円、大阪府が936円なのに対し、九州地方の福岡県を除く県では760円台と200円以上もの差が出ている。今回支援を手厚くすることによって、地方の中小企業の最低賃金を底上げしたい考えだ。最低賃金の地域格差によって、都会への人口流入が相次ぎ、地方の過疎化・人材不足が深刻化していることから、地方の中小企業の最低賃金を引き上げることで人材を引き留めたい考えも見え隠れする。
しかしこの助成金を受け取るために企業がすべきことは少なくない。まずは賃金引上計画を策定し、当然だが引上げ後の賃金額を支払わなければならない。さらに生産性向上のための業務改善計画を策定し、それに則った機器・設備の導入が必要となる。この生産性向上のための業務改善には、例えば人材育成や教育訓練による業務の効率化や、新たなシステムや特殊車両の導入などが含まれる。その一方で冷暖房の導入などの職場環境の改善やパソコンの購入などの事業活動に関係する支出は含まれない。そのうえで業務改善計画の実施結果および最低賃金の引上げ状況を明記した事業実績報告書を提出しなければならないのだ。加えて引上げの人数や引上げ額など、満額受給するためのハードルは高い。
地方の中小企業にとって200万円の助成金は魅力的だ。それに伴って労働者の最低賃金の引上げが実現されれば、企業・従業員双方にとって益となるだろう。ただし一時的な助成金だけで現在地方が抱えている問題を解決することができないのもまた事実だ。今後も地方の中小企業を支えるための継続的な支援が期待される。(編集担当:久保田雄城)