2018年の最低賃金が各都道府県で出そろった。毎年最低賃金は徐々に引き上げられてきたが、今回の引き上げは今までとは異なる部分が多い。引き上げ幅が過去最大となったことに加え、各都道府県の間の競争が激化しているのも今回の最低賃金引き上げの特徴だ。
厚生労働省の諮問機関である中央最低賃金審議会は7月に最低賃金の全国平均の引き上げ幅の目安を26円とした。これにより全国平均の最低賃金は874円となり、最低賃金を時給のみで示すようになった02年度以降最大の引き上げ幅となる。もっとも最低賃金の高い東京都は17年から27円増えて985円、一方で最も低い高知県や鹿児島県など8県でも23円増の760円となった。
日本の最低賃金の大きな特徴は都道府県ごとに設定されているという点だ。諸外国では国ごとに最低賃金が設定されていることが多く、自治体ごとに最低賃金の格差が生まれるのは日本特有の現象と言える。実際18年の最低賃金の改定ではもっとも高い東京都ともっとも低い8県の差は225円となっている。比率としては改善傾向にあるものの、依然としてその差は大きい。そのため各都道府県は人材の流出を防ごうと躍起だ。東北地方や九州地方などでは中央最低賃金審議会の目安額を超える引き上げを行っている県も少なくない。都道府県ごとに最低賃金が改定されるため、全国でもっとも最低賃金が低いとは言われたくないという思惑も見え隠れする。自治体同士の競争が激化すれば、経済力のある首都圏の自治体の方に分があるのは言うまでもないだろう。
最低賃金はわずかながら年々引き上げられてきている。しかし首都圏に比べ地方の最低賃金が低いため、人材が首都圏に流出していくことは今後も避けられない。今後も都道府県ごとの最低賃金の改定が行われていけば、自治体ごとの格差がさらに広がっていくことも予想される。むしろ諸外国に倣って国としての最低賃金の設定を行い、地域間の格差を無くしていく努力が必要なのではないだろうか。(編集担当:久保田雄城)