憲法は権力行使在り方定め人権保障する物と総理

2018年11月01日 06:33

 安倍晋三総理は憲法改正と閣僚としての憲法遵守義務について30日の参院本会議で憲法について「憲法は主権者たる国民がその意思に基づき、国家権力の行使の在り方について定め、これにより国民の基本的人権を保障するもの」と述べた。

 そのうえで、安倍総理は「同時に、国の未来、理想の姿を語るものでもある」と主張。「21世紀の日本の理想の姿を私たち自身の手で描くという精神こそ日本の未来を切り開いていくことにつながっていくと考える」とこれまでの持論を展開した。

 また「総理は憲法63条の規定に基づき議院に出席し、国会法70条の規定により委員会において発言しようとするときは議長または委員長に通告し行うものとされている。国会議員の中から指名された内閣総理大臣が議院の会、委員会で憲法に関する事柄を含め政治上の見解、行政上の事項について説明し、国会に対し議論を呼び掛けることは禁じられているものではないと考える」とし「三権分立の趣旨に反するものではないと考えている」と答えた。

 安倍総理は「憲法99条が憲法遵守義務を定めているのは憲法が最高法規であることにかんがみ、国務大臣、その他の公務員は憲法規定を遵守するとともに,その完全な実施に努力しなければならない趣旨を定めたものであり、憲法の定める改正手続きによる憲法改正について検討し、主張することを禁止する趣旨のものではない、と考えている」と正当性を主張した。

 立憲民主党の吉川沙織議員の質問に答えた。吉川議員は「憲法は権力者の恣意的行動を抑制する『縛り』として制定されたもの。総理は所信表明で『憲法とは国の理想を示すもの』と全く誤った理解を示している。総理は改憲という悲願を達成するため、真正面からではなく『政略主義』的に改正しようとしてきた」と指摘した。

 また吉川議員は「総理は北東アジアにおける安全保障環境の激変を理由に憲法96条の憲法改正手続きの要件緩和を目論み、失敗すると、これまで確立した(憲法9条に対する)政府解釈を変更するなど、権力のブレーキを次々にはずし、集団的自衛権の行使容認に踏み切ってきた」とこれまでの経緯を述べた。

 そのうえで「所信表明で総理は憲法審査会の審査の有り様に言及された。これまで総理は度々『国会のことは国会で決めていただく』旨答弁されてきたが、今回はこれまでの答弁と矛盾し、三権分立の観点からも問題があるのではないか。憲法第99条が規定する、閣僚などの憲法遵守義務について、どう認識し、それを全うするために具体的にどのような措置をとるつもりか。憲法遵守義務を負う総理は自ずと改憲に係る発言について自制的、抑制的であるべきと考えるがどうか」と質した。(編集担当:森高龍二)