人生100年時代と言われる。かつては人生50年と言われた。40代は初老と言われ体力が急激に落ち始め、老眼などの老化が顕著になる。50代には様々な疾患が好発し、適切な治療を受けなければ健康に生活することは不可能だ。医療技術の進歩によってこの状況は革命的に変わった。保健技術や早期発見制度も拡充し、ほとんどの疾患は薬物療法で少なくとも症状の悪化は防ぐことが可能となり、外科手術が必要なケースでもカテーテルなどの方法で大きく体力を消耗することはない。
この保健・医療技術の進歩によって現代の高齢者は元気で活動的だ。しかし、不安もある。長く生活して行くには充分な生活資金が必要だ。労働力年齢は従前の60歳から65歳に引き上げられたものの、未だ社会システムは高齢者を労働力として受入れる体制になっておらず、高齢者が就労によって生活資金を確保するためには多くの困難が存在する。
日本FP(フィナンシャル・プランナー)協会が全国の20代~70代の男女を対象に「世代別比較 くらしとお金に関する調査」を実施した結果を公表している。「老後のくらしは安心か不安か」と尋ねた結果では、「安心している」が4.1%で「どちらかといえば安心している」は22.0%、両者を合計すると26.1%が「安心」と回答している。一方、「不安がある」は28.0%で「どちらかといえば不安がある」が45.9%、両者で73.9%の者が「不安」と答えている。「不安」と感じている者が圧倒的に多数だ。
「不安」の内容については、「老後の生活設計」が60.4%で最も多く、次いで「自身の健康」が57.2%、「家族の健康」44.8%、「年金」42.3%となっており、やはり資金と健康が不安の原因となっているようだ。世代別に見ると親世代が後期高齢者になる40代では「介護」への不安が多くなっている。
生活資金の確保については「現役で働く期間を延ばす」が41.3%で最多、次いで「生活費の節約を心がける」40.9%、「健康に気を配り医療費を削減」31.5%、「若いうちから少しずつ資産形成に取り組む」29.2%となっており、長く働き充分な収入を得るために健康管理をしっかりするという考えのようだ。
「老後のための資産形成で有効だと思うもの」は、「公的年金」が52.2%と最も多く、次いで「民間の個人年金、企業年金など」42.9%、「個人型確定拠出年金」13.0%という順になっている。
老後が安心な社会の構築のためには定年退職年齢の引き上げと年金制度の維持にカギがありそうだ。(編集担当:久保田雄城)