トヨタ自動車と日本たばこ産業(JT)は、動植物などの品種改良を飛躍的に加速させるトヨタ独自のDNA解析技術「GRAS-Di」のライセンス契約を11月20日付で締結した。
これまで同技術のライセンス供与は、DNA解析を専門に行う受託解析会社にとどまっていたが、普及をさらに加速させる狙いからか、今回初めて、農業に関する事業を展開する民間企業「JT」と契約した。
トヨタは1999年以降、「もっといいクルマ」づくりを進めるうえで、「いい町・いい社会」づくりに貢献する事業分野として、家畜排せつ物から再生可能な資源を取り出すバイオマス事業や環境緑化事業などの多用な環境貢献型事業を進めてきた。
なかでも、従事者の高齢化や自給率低下という問題を抱える日本の農業分野において、農業が産業として維持・発展できるよう、「農業者の困りごと解決」につながる支援事業に力を入れている。
農業支援事業では、生産者が栽培しやすく、消費者のニーズに応える商品価値の高い品種への改良を促進するDNA解析技術の開発を進め、独自に「GRAS-Di」を2016年に公表した。
この「GRAS-Di」技術は、DNA解析の課題であったコストと工数を大幅に改善することで、品種改良を飛躍的に加速させることに貢献し、「サトウキビの耐病性遺伝子の発見」や「イチゴのゲノム解析」など、品種づくりの基盤技術として活用されている。
JTは、農業に関わる事業を展開する民間企業として、葉たばこの生産に関わるさまざまな研究に取り組んできた。このたび「GRAS-Di」ついてライセンス契約を締結したJTは、契約にあたって、同技術の利活用で「品質向上や信頼性の確保に繋がる有用遺伝子の発見など」が期待できる。
また、この技術は、農業分野のほか、水産業においても、「トラフグの遺伝解析」などに応用され、品種改良の促進に貢献。今後は、国内外の民間企業への情報開示や提供を通じて、水産業、林業、畜産業など幅広い産業への同技術の普及を加速させ、多彩な分野での品種改良の促進に貢献していく。
多分野にわたる同技術の広がりは、食糧の増産、天然資源の耐久性向上など、地球が抱える多用で大きな課題解決につながると考え、トヨタはこれらの環境貢献型事業を通じて、「いい町・いい社会」づくりに取り組んでいくとしている。(編集担当:吉田恒)