日本は現在、深刻な人手不足の状況にあり、こうした状況を背景に名目賃金は確実に上昇傾向で推移している。周知のとおりアジア経済も堅調に推移しており、中韓等の一部で減速の兆候も見られるものの、全体としては今後も高い成長基調で推移して行くというのが大方の見方だ。
ASEAN・インドでは消費・サービス財へのシフトも大きくインフラへの投資や中間層の台頭に伴うサービス化投資で底堅く成長を維持するとみられる。消費・サービス化と共にIT関連需要も伸びており、関連業種の給与も高い伸びが見られる。
グローバルな転職サービスを強みとしているJACリクルートメントが、2018年7~9月にかけてアジア9カ国の給与水準調査を実施し、9日その結果を公表した。9カ国とは、シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、インドネシア、香港・中国、韓国、インドそして日本である。
レポートでは「発展が多様化しているアジア各国で共通した傾向が表れるのは近年珍しく、IT系に関しては比較的共通して上昇がみられる」としている。
詳細をみると、タイで外資系のIT業界プロジェクトマネージャーが1050~2400万バーツで対前年比64%の大きな伸びでIT関連では最も大きな伸びとなっている。シンガポールで外資系のIT業界技術系部長級が168~280SGドルで同56%の伸び。マレーシア、インドネシアのIT職種で40%といずれも高い伸びとなっている。
IT投資が一巡し減速の兆候が指摘されている韓国ではIT業界の外資系営業職で22%の伸びとなっている。日本では日系のIT業界・社内SEのマネージャーレベルが700~1200万円レベルで前年比20%の比較的小幅の上昇にとどまっている。
日本では近年、年収の上昇は見られなかったが、昨年から一部職種で年収の上昇傾向がみられるようになり、特に日系企業でその傾向が目立っているようだ。ただし、レポートによれば「アジアの日系企業と現地系および欧米系の外資系企業との給与差は開いたままで、優秀な人材の採用や定着に難航している企業も少なくない」、「日系企業の中には福利厚生など、給与以外の制度を手厚くすることで会社の魅力度を上げる取り組みを行う動きもある」が、「転職や就職を判断する際、給与差が非常に大きいことからその効果は限定的」という状況のようだ。
日系企業は国内、海外ともに人手不足、人材調達難の状況にあるらしい。給与の上昇努力と福利厚生の強化の「両方を並行して取り組むことが求められている」とレポートはまとめている。(編集担当:久保田雄城)