「より高い賃金を求めて」そもそも回答にない

2018年11月18日 10:53

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労働裁量制の拡大時に示した政府データのデタラメさもさることながら、今回の説明でも政府データの信ぴょう性に疑義が深まる

 「より高い賃金を求めて」という回答は失踪実習生の失踪理由回答選択肢に、そもそもなかった。「虚偽答弁」としか言いようがない。

労働裁量制の拡大時に示した政府データのデタラメさもさることながら、今回の説明でも政府データの信ぴょう性に疑義が深まる。外国人労働者受け入れ拡大をめぐる重要法案をめぐって、法務省が示した外国人技能実習生の失踪実習生に対する聴取データ。失踪実習生2892人に聴取した結果、失踪理由の約86.9%が「より高い賃金を求めて」などと実習生が自主的に高い賃金を得るため失踪したかのように説明してきた。

 しかし、実際には「より高い賃金を求めて」などという項目はそもそも選択肢になかった。加えて「約67.2%が低賃金」による失踪だということが明らかになった。

 「暴力を受けた」ので失踪したとの回答も当初説明では回答者の88人、率にして3%だったが、実際には142人、4.9%と2ポイントも増えた。16日になって明かした。

 法務省は「失踪動機」項目の「数字計上のミス」(?)だと説明し、その発生原因について「各地方入国管理局から集約した調査結果を本省入国管理局担当者がエクセルファイルを利用し集計する際、エクセルファイル上のデータの切り貼り作業中に必要作業を忘失し、集計誤りを招いた」などとした。

 また「聴取票の『原因・理由・目的等』欄の各項目について、複数選択が可能で、同項目に『低賃金』『低賃金(契約賃金以下)』『低賃金(最低賃金以下)』という類似した3つのチェック欄が設けられ、対象者によっては複数のチェックをしていた。そもそも聴取票の項目設定が必ずしも適切でなかった。担当者の理解不足により、先の原提出資料の集計時に各項目の集計結果を単純に合算してしまい人数を計上してしまった」などと説明している。

 また技能実習生の1か月の給与はいくらか、2870人のうち、1627人、率にして56.7%が「10万円以下」だった。15万円以下となると、2664人、率にして92.8%にのぼった。しかも、707人は給与から3万円以上を光熱費などの名目で控除され、中には10万円以上を控除された実習生が6人いたことも明らかになった。

 立憲民主党の山尾志桜里議員(野党筆頭理事)は「法務省はこのデータの集計を不適切にやっていたことにより、法務省自体が大臣を含めて技能実習問題の根幹部分を間違っていた」と指摘する。

 「2014年からそうだったかもしれない。法務省の誤った問題意識で今まで技能実習制度がここまでひどい状況を作った」と責任を提起した。そのうえで「今回提案されている新制度は技能実習生が50~60%、場合によっては80%という業種もあるなかで大変な問題だ」とした。

 出入国管理法改正案などの審議入りを強引に進める衆院法務委員長に対し16日夕、委員長解任決議案を立憲民主党が衆院に提出したのも無理からぬことだ。

 辻元清美国対委員長は「法務省は技能実習生の実態をねじ曲げるようなことを何年にもわたってやってきた可能性がある」とした。そのうえで「そうしたものを出しておきながら今日から強行に実質審議するのはおかしい。審議に資すると言っていたデータに間違いがあった。しっかり技能実習生の実態を把握したうえで、きちんと審査していくために、今日の審議はあまりに無謀だと審議しないよう求めてきた。(それでも委員長は強行した)」と中立であるべき委員長が成立へ日程ありきの運営を図るなら、解任決議に至るのは当然かもしれない。

 政府・与党は「国民への理解を進めるため、丁寧な説明をする」などと口先だけの対応ではなく、誠意をもって、国民が納得できる説明とそれを裏付ける客観的資料を開示すべき。「今国会で成立、来年4月から施行」などという暴挙はやるべきでない。経団連の会員企業から政治献金をもらっているからといって、経団連の下請け内閣に成り下がるな。
 
 自由党の小沢一郎代表事務所のツイッター「公文書改ざんにデータ改ざん、虚偽答弁。そして誰も責任をとらない。もうこの政権のすべてが信用できない」。まさに「不信感」で救われない政権だ。このうえ、今国会でこの法案を通すようなら自民、公明は選挙で大企業から支持されるが、国民からの支持を減らすだろう。時間をかけて審議を尽くせ。(編集担当:森高龍二)