独フォルクスワーゲン(VW)と米フォード・モーターが、国際的な包括提携に合意したと正式に発表した。両社の提携で世界販売台数1700万台超の自動車連合が誕生する。両社は2018年6月に戦略提携に向けた覚書を交わしていた。
今回の提携を両社は「グローバルアライアンス」として、世界規模で開発・生産、購買などを補完し合うという。株の持ち合いは当面ないが、合同委員会を設け今後のアライアンスの方策を決めるとしている。
協業では手はじめに具体策として2022年までに新型環境対応車としてコマーシャルビークルを開発、世界で発売する。フォードが「トランジット」「レンジャー」などで強みを発揮しているピックアップトラック分野で新型中型車種を、VWが「トランスポーター」などの開発力を活かして新型小型コマーシャルバンを、それぞれのブランド向けに開発・生産するという。同時に電気自動車(EV)や自動運転車の協働開発も加速させる。新アライアンスで貿易摩擦や技術革新によるコスト増に対応するというわけだ。
今回の発表以前に両社は、EVと自動運転、移動サービスの分野では協業拡大に向けて検討することで覚書を交わし、自動運転車の共同開発で交渉していることが昨年明らかになっていた。両社は研究・開発における自前主義を捨て、EVや自動運転車の開発にかかる費用を削減するのが狙いだ。もちろん、開発スピードを上げてグーグル系自動運転開発会社ウェイモ、EVで先行する米テスラなど新興勢力に対する遅れを取り戻すことも大きな目的だ。
VWは自動運転開発をグループのアウディに任せていた。アウディは2017年に世界初とする「レベル3」の自動運転機能を搭載するセダン「A8」を発表した。しかしながら、法整備が依然として進まず、現在なお、利用できない状態が続いている。
自前主義からの転換するのはフォードも同じ。創業家が実質的な経営権を握るフォード社は、同時多発テロ以降の業績不振が響いて、ジャガーやランドローバーなどを含んだPAGを売却するなどしたが、その後も経営は安定せず、投資を単独で負担するのは困難、他社との協力が不可欠だ。VWとの提携については「株式の持ち合いなど資本関係にならない」ことを前提として、分野ごとに研究・開発関係を模索する交渉を進めてきた。
両社の共同開発交渉には、自動車業界の生き残り策を探る、現状の危機感が透けて見える。一方で世界最大を豪語していたルノー・日産・三菱自連合にイエローシグナルが灯っている今、多国籍間企業アライアンスの成否が問われる。(編集担当:吉田恒)