国民健康保険。国民にとって最後のセーフティーネットだが、加入者は自営業者より、はるかに多いのが医療機関の利用頻度が格段にあがる定年退職による無職の高齢者や非正規雇用で働く比較的低所得の人たちだ。
にもかかわらず国民健康保険料は「協会けんぽ」に比べ、相当高い。最大原因は各家庭に均等にかかる「平等割」、家族の人数分を掛ける「均等割」という子どもが増える毎に保険料アップの仕組みになっていることにある。
日本共産党が「公費負担で協会けんぽ並みに」と『均等割り』を廃止し、重すぎる国保料の負担軽減を提案するキャンペーンを展開しているが、国保加入者の8割が無職の高齢者や非正規雇用で働く人たちである実態を踏まえれば、この提案を含め、党派を超え、制度の見直しをしなければならない時期に来ている。
すべての国民が安全に安心して健康に暮らせる社会保障制度を構築するには、国保制度の見直しは欠かせない。
共産党は機関紙赤旗2月10日の日曜版で国保料負担の異常な高さを示している。それによると「東京23区に住む給与年収400万円の4人世帯の場合、中小企業勤務の労働者の場合では加入する協会けんぽなら保険料は本人の負担分は19万8000円、国保加入者の場合は42万6000円と2.15倍にもなる」。
負担の重さは滞納に追い込まれている人たちの多さにも表れている。赤旗によると「滞納は全体の15%を超える289万世帯」。万一、病気になった場合、医療機関で全額負担になるのだから、国保料は優先して払いたいだろうことは推察するに容易。それでも払えない。
赤旗は多額の滞納者、数人の例を取り上げ紹介。名古屋市内で梱包業を営む男性の場合、妻と子ども5人の7人家族だが、リーマンショック以後、受注ゼロで国保料が払えなくなった。結果、滞納額が約228万円にもなってしまった。ある日、従業員の給料約154万円を含む預金約228万円が全額差し押さえられた、と紹介。従業員の給料まで取り上げるのはいかがなものか、この男性にも最低限の一家の生活費が必要だ。理不尽な差し押さえとしか思えない。
共産党が提案するように「協会けんぽ並みの負担」に軽減されれば、滞納率は大幅に改善されるだろう。「公費を1兆円つぎ込めば『均等割』『平等割』を廃止し、多くの自治体で『協会けんぽ並み』の国保料にすることができる」という。
筆者は、0歳から74歳までの全員が協力し、併せて多くを公費で賄っている「後期高齢者医療制度」が適用される年齢(75歳~)まで、20年以上協会けんぽなど「被用者保険」に加入していた人は定年退職後も被用者保険に加入し続ける(そのために必要な保険料は加入者が支払い続ける)道も検討してよいのではないか、と感じる。
国保が制度として安定的に持続できるようにするには、公費投入の一方で、医療機関にかかる機会が増える「定年退職」年齢になって、「協会けんぽ」などの被用者保険から「国保」に移ることになる構造的な問題を見直す必要があるのではないか。
協会けんぽは、退職後約2年間は加入者が費用を全額負担すれば(退職前は勤務先の事業所が半額負担していた)任意継続できるが、それ以降は国保に入る。これを見直し、後期高齢者医療制度が適用になる年齢まで被用者保険に加入し続けるようにする。負担はかつての事業所などが2割程度負担するなど、工夫をすればよいと思われる。医療保険制度の一元化が図られるまでは、そうした工夫を検討する必要もあるのではないか。(編集担当:森高龍二)