諸外国でクレジットカードやスマートフォンによる決済が中心になるなか、日本でもキャッシュレス決済を導入していこうという政策が進められている。システムなどの観点から不安の声もきかれるが、市民生活になじむよう積極的な取り組みが必要となる。
クレジットカードなどで商品やサービスへの支払いを行うキャッシュレス決済が推進されている。もともとカード社会であったアメリカやヨーロッパでは、普段の買い物や公共交通機関の利用であっても現金ではなくカードで支払うことが普及している。中国ではスマートフォンを使ったモバイル決済が進む。日本はこの分野において圧倒的に遅れを取っているのが現状となった。
経済産業省発表のキャッシュレス・ビジョンにおいて、日本も現金を使わないキャッシュレス決済の利用を進めたいとしている。決済方法としては、従来のような後払い式クレジットカード、銀行残高からリアルタイムで取引するデビットカード、事前にチャージするタッチ式のカード、QRコードなどをスマートフォンで読み取って決済するモバイルウォレットが代表的だ。しかし、2016年の段階でこれらの決済方法が民間の消費支出に占める割合は20%であったという。
キャッシュレス決済のメリットとしては、現金を扱うことによって起こる窃盗などの犯罪の抑止、決済がスムーズに行われるようになるというものがある。小売店などでは従業員に現金管理を任せなくていいという利点もあるという。
デメリットとしては、現金決済と比較して金銭感覚に実感を持てないことに対する不安が大きいとの意見がある。また、現金決済によって引き起こされる犯罪が抑止されるというメリットがある一方で、個人情報の流出やシステム上の犯罪を懸念する声もあった。
現実問題としてメリット・デメリットともにありながらも、日本においても導入は着々と進んでいる。そこで問題になるのは、対応しきれない商店や世代間格差である。キャッシュレス決済を推進するためには実店舗と消費者がともに積極的な対応をすることが必要であると政府は述べているが、個人商店などにおいては導入コストだけでなくキャッシュレス決済の手数料が負担になる場合もある。消費者の側も、高齢者など新しいシステムに対応できない層にどう働きかけをするかが問題になる。
政策として進める以上、メリットを求めて現金決済から移行する層だけがターゲットではない。デメリットに対する不安を払拭し、キャッシュレス決済の必要性を生活にどう根付かせるかが課題になる。(編集担当:久保田雄城)