秋の消費税増税を前に景気動向に関心が集まっている。6月の経済月例報告での政府の認識は、「個人消費は持ち直し」、「設備投資は緩やかな増加傾向」、「輸出は弱含み」、「生産は弱含み」、企業収益は高い水準で底堅く推移」、「業況判断は製造業で慎重」、「雇用は着実に改善」、「消費者物価は緩やかに上昇」、先行きについては「通商問題の動向が世界経済に与える影響に一層注意」、「中国経済の先行き、不確実性、金融資本市場の変動の影響に留意」という要旨になっている。
6月下旬、東京商工リサーチが2019年度「業績見通し」に関するアンケート調査の結果を発表している。調査結果の要旨は「減収と減益予想が増加、人件費上昇が経営の重石に」となっている。
19年度に「増収」を見込む中小企業(資本金1億円未満)は30.3%で、前年度の36.6%より6.3ポイント下落、また大企業は37.1%で前年度の44.0%より6.9ポイント下落となった。経常利益の「増益」を見込む中小企業は26.2%、大企業は28.7%とともに前年度の30%代から大きく減少した。12年からの長期的な景気拡大が頂状態に入り、企業業績の先行きの悪化が鮮明となっている。
6846社に対するアンケート調査の結果では、「減益」予想の理由は中小企業で「一人あたり賃金の上昇」を41.0%が挙げており、一方、大企業では同理由は30.5%にとどまっている。政府は13年以降、賃上げを経済界に要請してきたが、業績改善の減速と、賃上げが中小企業では経営上の大きな負担になってきているようだ。
増収の理由は「国内法人向け販売の増加」が76.7%と最多となっているが。減収の理由でも「国内法人向け販売の減少」が57.8となっており、業種・分野によりバラツキがあるようだ。また、「米中貿易摩による影響」も22.0%あり、米中貿易摩などによる中国景気の減速を懸念する声が目立つ。増益の理由については「売上高の増加」が84.1%で断トツに多く、また政府の賃上げ要請のなか「人件費抑制」の為のコスト削減努力が功を奏したことを上げる起業も目立った。
減益予想の理由では「売上高の減少」が69.9%で最多。「賃金の上昇」は大企業で30.5%に対し、中小企業では 41.1%と大きな差があり、資金力の乏しい中小企業では賃上げ負担が大きく影響しているようだ。
全体としては約半数が前年並みの予想であるが、大・中小ともに減収・減益が増加傾向で米中貿易摩擦を含む今後の環境変化の動向から目が離せない。景気腰折れの懸念は払拭されてはいない。(編集担当:久保田雄城)