2019年6月19日にIT専門調査会社 IDC Japan 株式会社が発表した調査報告によると、2019年第1四半期(1月~3月)の、ウェアラブルデバイスの世界および日本における出荷台数は前年同期比55.2%増の4958万台となることが分かった。
全体の63.2%を占めたのは、腕時計型とリストバンド型で合計3132万台。全カテゴリー中トップの成長を示したのは、全体の34.6%を占める耳装着型デバイスで、前年同期比135.1%増の出荷台数となっている。日本国内でもAirPodsなどの耳装着型デバイスの伸長は目覚ましく、前年同期比351.5%増を記録している。
また、データ元となったWorldwide Quarterly Wearable Device Trackerの昨年の予測によると、世界のウェアラブルデバイス市場は2018年から2022年まで年間平均成長率11.6%で成長し、22年には1億9039万台の出荷に達すると見込んでいる。
しかし、ウェアラブルデバイス市場の成長をさらに進めるためには、乗り越えなければならない大きな壁がある。それは「電池」の問題だ。
ウェアラブルデバイスだけでなく、スマートフォンやノートPC、IoT機器など、あらゆるハイテクモバイル製品は全て電池、それも主にリチウムイオン電池に支えられている。リチウムイオン電池は、ニッケル・カドミウム蓄電池やニッケル水素電池など他の二次電池に比べて、エネルギー密度が高く、大きな出力を得ることができるというメリットがある。しかし、その一方で充電時間が長いことや、本体が過熱するなどの問題、さらには原料となるリチウムの枯渇も懸念されている。また、製品の高機能化に伴なって、高速処理の必要性や大容量データによる高負荷化が進んでいること、その反面、低消費・高効率による長寿命が求められていることなど、課題は山積みだ。
そこで、一つの流れとしては現在のリチウムイオン電池に代わる新たな二次電池を開発する動きが活発化している。例えば、リチウムの代わりに安価なナトリウムを使用する「ナトリウム・イオン二次電池」や、米Ionic Materials社が開発中の電解液を使用しないアルカリ充電池「アルカリポリマー電池」などがある。また、トヨタ自動車〈7203〉の研究部門と東工大のチームは、電解液ではなく無機系の固体電解質を使用することでリチウムイオン電池よりも安全性を高め、容量も2倍以上という「ソリッド・ステート・リチウムイオン電池」の開発を公表している。
電池そのものではなく回路の消費電力を下げることによって、これらの課題を解決しようとする動きもある。重要な役割を担うのが電源ICだ。例えば、最新の情報では7月10日に電子部品大手のローム株式会社〈6963〉が発表した昇降圧DC/DC コンバータ「BD83070GWL」などがそれにあたる。
同社曰く、小型電池で駆動する電子機器に対して『低消費エコデバイスの決定版』を目指して開発された超低消費電力の昇降圧型電源ICだという。低損失MOSFETを内蔵し、低消費電流回路を搭載したことで、電動歯ブラシやシェーバーなどの動作時(負荷電流 200mA時)に業界最高の電力変換効率97%を実現する。同時に、消費電流も昇降圧電源ICでは業界トップクラスの2.8μA を実現している。これにより機器が待機状態のとき、一般品と比較して1.53倍も電池を長持ちさせることができるというのだ。
ウェアラブルデバイスだけでなく、IoT機器や電気自動車の普及など、これから益々、我々の生活の中で二次電池の需要が増してくることは間違いない。リチウムイオン電池に代わる次世代の二次電池だけでなく、優れた電源ICの必要性と重要性も増してくることだろう。(編集担当:藤原伊織)