有効求人倍率の最新のデータ5月分は1.62倍で高い水準を維持し続けており、日本産業の人手不足は極めて深刻な状況にある。既に人手不足による倒産も増加傾向だ。しかし、この人手不足は生産年齢人口の減少を背景に持つ絶対的な不足が主なものであろうが、業種、職種によってバラツキが大きく、技術や取引構造の急速な変化に伴う産業構造、業務構造の変化によるミスマッチ人手不足も大きな部分を占める。
AI・IT技術者はその代表であろうが、産業が必要とする人材のスキルの大きな変化が生み出している人手不足という側面も大きい。逆に言えば産業が必要とするスキルを持たない人材は必要の無い人材ということになる。このスキル不足による人手不足下での過剰人員の問題は今後さらに大きな部分を占めるようになるであろう。
18日、東京商工リサーチが2019年の1月から6月の上半期における上場企業「早期・希望退職」実施状況についての調査の結果を公表している。集計対象は「会社情報に関する適時開示資料」に基づき19年1月以降に希望・早期退職者募集の実施を情報開示し具体的な内容を確認できた上場企業である。
19年の上半期、6月30日までに開示資料で希望・早期退職者の募集実施を公表した上場企業は17社存在し、募集人数は判明したものだけで合計8178人に達している。これは昨年18年の1年間の募集人数4126人の約2倍にあたり、昨年よりさらに大規模なリストラが行われているようだ。
業種別にみると、業績不振が目立っている電気機器で5社と最も多く、次いで、薬価引き下げなどを控えた製薬が4社と続いている。年齢条件についてみると、45歳以上が10社で最も多く、40歳以上が2社、35歳以上も1社と募集年齢の若齢化の傾向が見られる。中小企業では求人難と退職によって人手不足が深刻さを増している一方、上場企業では事業の選択と集中、人員構成の是正のために業績が好調な段階で将来を見越した「先行型」の希望退職募集を実施した企業も一部に出ている。
企業別に募集人員を見ると、富士通で2850人と最も多く、次いで日本電気の2170人。経営再建中のジャパンディスプレイが1200人、東芝が1060人となっている。昨年18年には1000人超の募集は年間1社であったが19年は6月までに既に3社存在し、リストラの規模が大きくなっているようだ。(編集担当:久保田雄城)