ADAS進化の裏で求められる部品の小型化。難題を超えた小型MOSFETが登場

2019年08月04日 11:15

ローム0731

ロームは独自工法を用いて、業界で初めてパッケージ側面の電極部分の高さ130μmを保証する超小型下面電極MOSFETの開発に成功。外観検査を容易にし、信頼性の向上に貢献する。

 ダイムラーとベンツの手によってガソリン自動車が誕生したのが1885年。それから1世紀半の時を経て、今、自動車が大きく生まれ変わろうとしている。

 自動車のエレクトロニクス化は年々加速度を増しており、その中核となる先進運転支援システム「ADAS」、車載情報機器「Infotainment」、回転エネルギーを駆動輪に伝える「Powertrain」といった3大電子技術の発展に伴って、自動車用半導体市場も活気づいている。

 世界屈指の情報会社IHS Markitでは、2015~20年の自動車向け半導体市場は年平均で5.8%の成長を遂げると予測しているが、中でも特筆すべきは、同期間で年平均20%を超える驚異的な成長率が予想されているADAS関連分野だ。ドライバーをサポートする安全性能の向上や細分化に加え、現実味を帯びてきた完全自動運転自動車など、これからの自動車関連市場を考える上で、ADAS分野に寄せられる期待は大きい。

 そんなADAS分野の中でも、最も重要なデバイスがカメラとイメージセンサーだ。すでに市場で販売されている自動車でも、安全や制御、情報収集など様々な用途でカメラの搭載が増えているが、今後、ADASの進化と自動運転技術の発展ともに、さらに車載カメラとイメージセンサーの重要性は増していき、将来的には携帯電話・スマートフォン市場に匹敵する巨大マーケットに成長するとみられている。

 しかし、そこでカギとなるのがカメラモジュールの小型化だ。カメラの搭載点数が増えるからといって、自動車を大きくするわけにはいかない。箱の大きさが決まっているところに、これまでの2倍3倍もの部品を詰め込もうとするのだから当然、一つ一つの部品の大きさやパッケージを工夫するしかない。例えば、電子部品のチップは最後にモールド樹脂などでパッケージングされて完成するが、大電流を保持したまま、部品をより小型化するため、電極をパッケージの横に突き出させない下面電極のパッケージが注目されている。ところが、下面電極のパッケージは側面に十分な半田フィレットが形成されないため、車載で必要とされる半田高さを確保できないので、実装後の半田づけ状態の外観検査が困難で、信頼性の面で課題があった。

 当然、この課題に対して電子部品メーカー各社でも対策を講じようとしているが、その中で、日本のロームが画期的なMOSFETを開発した。

 同社は、これまで超小型MOSFET をはじめ業界に先駆けた製品開発で高い実績を持ち、世界でも高い評価を受けているが、今回、同社が開発を発表した車載向け超小型MOSFET「RV4xxx シリーズ」は、リードフレーム全面にバリア層を設ける独自工法を用いたWettable Flank 形成技術を用いることで、実装時の製品の傾きや半田不良を防止し、DFN1616 パッケージ(1.6mm×1.6mm)としては、業界で初めて、パッケージ側面の電極部分の高さ130μm の保証を実現。これにより、部品実装後の外観検査で確実に半田づけ状態を確認することができる。これでようやく、車載の信頼性に足りうる小型パッケージができたといえるのではないだろうか。

 自動車のエレクトロニクス化は、便利さ以上に安全性の確保が必要だ。より安全な新たな車社会の実現のために、日本の技術が世界の最先端で活かされることを期待したい。(編集担当:藤原伊織)