富士経済がまとめた「グローバル家電市場総調査 2019」によると、世界の白物家電市場は堅調に推移している。2023年までに、洗濯機や洗濯乾燥機、衣類乾燥機、温水洗浄便座などの衣住関連分野で2018年 比110.3%の5億7414万台、冷蔵庫や食器洗浄乾燥機などの調理関連分野で同年比107.8%の8億9403万台、美容・健康関連分野では同年比117.0%となる8億2659万台に成長すると予測。中でも注目されているのはロボット掃除機で、2018年比139%となる1710万台に達するとみられる。中国や東南アジアなどの新興国での需要増加だけでなく、日本や欧米各国でもIoT化、AI化された製品の需要増加が市場の追い風となっている。
IoTやAI搭載もさることながら、近年の家電製品の特徴は「触れる」ことと「話す」ことだろう。今や、家電製品をはじめ、住宅設備やヘルスケア機器、産業機器、そして子どもたちの玩具に至るまで、あらゆる電気製品の操作がタッチパネルや音声操作で行われる時代。そして、機械の方からも音声ガイダンスや、効果音の再生などでユーザーへのコミュニケーションを図ってくる。より安全で人にやさしいインターフェースの実現には、これらの機能は欠かせないものになりつつある。
音声ガイダンスや効果音機能の搭載にあたり、課題としてあげられるのがシステム開発に対する負担軽減だ。従来の家電向けマイコン製品には音声再生機能が備わっていないため、音声再生機能を付加しようとすれば、別チップを追加し、音声合成機能やスピーカアンプを構成する必要があった。
そんな中、ロームグループ〈6963〉のラピスセミコンダクタは、 家電製品や警報機器、防犯機器、産業機器などの用途に向けて、業界唯一、1 チップで音声再生機能を構築できる音声再生マイコン「ML610Q304」を2014年に発表している。同社独自の8ビットマイコンコアをベースに、音声合成回路、D級スピーカアンプ、不揮発性メモリ、発振回路などが搭載されているため、外部にスピーカを接続するだけで、音声機能の付加が簡単に実現できるようになった。さらにチップ内部においても、音声再生機能を専用のハードウェアで実現しており、CPUへの負荷が小さいので、マイコンのシステムパフォーマンスに影響を与えることが少ない点でも高い評価を得ている。
そして今年7月31日には「ML610Q304」の初期開発・評価用スタータキット「SK-AD03-D610Q304」を発表。同キットは、基板に実装済みの「ML610Q304」にあらかじめメロディ音階の再生を行えるサンプルプログラムおよびサンプル音データ(チャイムなどの電子音)が書き込まれている上、スピーカも同梱されているので、梱包を開封してすぐに音質の確認と評価が行えるようになっている。また、警告音、呼び出し音、操作音など、300種類以上のサンプル音データをラピスセミコンダクタのサポートサイトから入手できるので、あらゆる電気製品への音声再生機能導入を後押ししそうだ。
音声再生機能による警報や音声ガイドは、家電製品や住宅設備、オフィスビルや商業施設・工場など、あらゆる場面で必要なものであり、人にやさしいインターフェースの需要にあわせて今後ますます増えていくだろう。より安全にスマートに電気製品が扱えるよう、これからも技術の発展に期待したい。(編集担当:藤原伊織)