政府は消費税率引き上げに伴う需要平準化対策としてキャッシュレス対応によるポイント還元事業の支援を行っている。これは増税前後の消費需要を平準化することで増税ショックを和らげることを目的としていると同時にキャッシュレス化の普及によって消費経済の生産性の向上、利便性の向上を狙ったものでもある。
日本のキャッシュレス化の現状は、国民のキャッシュレスシステムへの信用度が未だ十分ではないなどの理由で諸外国と比べ普及率は低い状態を維持している。信用度の向上という課題を残しつつもキャッシュレス化が経済効率と利便性を向上させることは間違いなく、様々な角度からキャッシュレス化促進の努力を行うべきであることは論を俟たない。
キャッシュレス化が実現した場合、どの程度の生産性向上があるのか、この観点からクレジット会社のJCBが現金、クレジットカード、非接触型、QRコードの4つの決済方法について決済速度に関する実証実験を行い、その結果を8月28日に発表している。
実験では100名の被験者が25名ずつ4つの決済方法で組分けされ、それぞれについて商品購入にかかる決済処理時間が計測された。実験の結果、非接触型の処理時間は6~10秒で平均処理時間は8秒、クレジットカードでは9~19秒で平均処理時間は12秒、QRコードは12~32秒で平均時間は17秒、現金は15~40秒とバラツキが大きく、平均処理時間は28秒となった。
キャッシュレス全体でみると処理時間は6~32秒で平均処理時間は12秒となる。単純に平均処理時間で比較するとキャッシュレスは現金よりも16秒処理時間が短く、非接触型に限れば20秒処理時間が短いと言うことになる。
JCBの積算では現金決済を完全にキャッシュレスにすれば年間約3時間の自由時間が増加するとされる。また店舗側としては、1日のレジ業務において消費者の全てがキャッシュレス支払いをした場合、労働者1人あたりの労働時間は約4時間短縮されるとし、従業員の労働量削減や人員不足の解消にもつながるとしている。また、日本経済全体としてはキャッシュレス化で1日約22億円分、年間で約8000億円分の時間が短縮され、就業者1人当たり年間約1万2000円相当の価値が創出されるとしている。
積算数値は平均値から導き出された概数であるというものの、キャッシュレス化がマクロに経済的な利益をもたらすことは間違いないであろう。(編集担当:久保田雄城)