汚染処理水の海洋大気放出案に代替案求める声も

2019年12月25日 06:12

 政府は23日、東京電力福島第一原発事故による汚染水の処理をした後も残る「放射性物質トリチウムを含んだ水をどう処理するか」を検討している政府の有識者会議が示した「海洋への放出」「水蒸気での(大気への)放出」「海洋・水蒸気(大気への放出)の併用」の3案を公表した。

 事故以来、今も日量約170トンもの汚染水が発生し続けている。原発敷地にはすでに約115万トンに及ぶ処理水をタンクで貯蔵(7月18日現在)。加えてタービン建屋内の滞留水(約1万7390トン、7月18日現在)の処理後の貯留も必要で、こうした処理水をどうしていくかも、原発事故処理の大きな課題になっている。

 有識者会議は海洋放出、水蒸気での大気放出は実績があるなどとし、放出時期や期間については「政府が決定すべき」とした。

 しかし、海洋放出では水産業はじめ観光への影響が明らか。さらに海外から海洋放出を懸念、反対する声が国際会議でも提起されている。風評被害は避けられそうにない。水蒸気での大気放出についても農業、畜産、観光への風評被害は同様に広がることが懸念される。大気放出は特に国内での影響範囲が広がるとみられる。

 東京電力は2022年夏ころには汚染水処理水の貯蔵タンクの容量が満杯になる、敷地内に余裕がない、貯蔵タンク確保を敷地外に求めるのも難しい旨を示しているが、国際環境団体NGOグリーンピースは「より安全な対策が十分に検討されていない」また、東電が今年8月に示した資料で汚染水処理水の貯蔵タンクの置き場は敷地内の更なる利用や敷地外利用も不可能ではないことが明らかになっているとし「貯蔵継続」を強く要請。

 汚染水処理対策委員会に対し、24日、4万人超の署名を添え「汚染水を意図的に放出せず、並行してトリチウム分離技術の開発・適用を求める」。

 グリーンピース・ジャパンのエネルギー問題担当、鈴木かずえ氏は「原発事故の発生当初から、放射能汚染水の危機管理は次々に失敗してきた。日本政府は環境、地域社会、太平洋およびその他の海の広範な汚染を犠牲にしてコストの最も低い選択肢を選ぶのではなく、放射能汚染水について、より安全で持続可能な代替案を慎重に検討すべき」とHPで海洋・大気放出の両案を撤回するよう訴えている。(編集担当:森高龍二)