米中摩擦、新型コロナが、世界経済全体の下押し圧力に。~内閣府報告書

2020年03月01日 11:36

画・米中摩擦の不確実性。中国は低迷続く。世界経済は20年に回復。~内閣府

内閣府が「米中貿易摩擦下の世界経済と金融政策」を公表

 2018年から続く米中貿易摩擦の影響で19年後半から世界経済は減速するに至っている。不透明感が高まる中、世界的な貿易の縮小や生産・投資活動の停滞が生じている。さらに昨年暮れより中国武漢を発信源とする新型肺炎の流行がとまらず、中国経済は更に停滞し製造業におけるグローバル・バリュー・チェーンの進展も、こうした縮小や停滞の動きを加速させているとみられる。

 19日、内閣府は「米中貿易摩擦下の世界経済と金融政策」を公表し、米中摩擦に加え新型肺炎による世界経済停滞への懸念を示した。

 19年後半に入り再び米中間の緊張は増大、世界経済の減速は一層鮮明となり、IMFの20年1月時点の見通しによれば17年に3.8%であった世界の実質経済成長率は18年に3.6%と低下した後、19年には2.9%と18年よりも更に低下することが見込まれている。米中摩擦を受け既に世界経済は18年後半から低下傾向にあったが、特に19年に入ってからアメリカ、 EU、中国、いずれの地域においても成長率が鈍化しておりG20全体の減速をもたらしている状況だ。

 IMF試算による世界経済への影響をみると20年の実質GDPへの下押し効果が最も大きく、合計で0.8%程度押し下げられるとされ、20年の実質GDPをアメリカで0.6%、中国で2.0%程度押し下げるとしており、アメリカよりも中国での押下げ効果が大きくなっている。日本への影響もより大きなものになると懸念される。

 世界の貿易は18年後半以降伸びが鈍化し19年後半以降は前年比で減少している。輸出の伸びの低下は当時国であるアメリカと中国にとどまらずユーロ圏や中国以外の新興アジアの輸出の低下ももたらしている。今回の減速局面では貿易の縮小が特定の国・地域だけにとどまらず世界的かつ同時的に広がっている。

 アジアでは中国経済の減速に伴い18年末以降、中国向け輸出が低調となっており、特に中国の輸出品に使用される中間財として半導体 や電子部品での縮小が顕著だ。

 本年1月以降は 新型コロナウイルスの感染が急速に拡大しており、報告書は「事態の収拾が長引いた場合に消費や生産活動に与える影響も懸念される」、「感染拡大による中国の生産活動の停止が、他国において部品供給網の寸断につながるような場合は、当該国の生産停止を招くなど直接的な影響が及ぶ点にも留意が必要である」と指摘している。(編集担当:久保田雄城)