新型コロナウイルス感染拡大への、自動車工業会など4団体による異色メッセージ

2020年04月12日 09:43

Akio Toyoda Speech

豊田章男・トヨタ自動車社長ほか自動車4団体トップが4月10日、インターネットで異例の記者会見を行なった。「医療崩壊を食い止めるためにも、踏ん張って経済を回し続ける」と述べた

 日本自動車工業会・豊田章男会長(トヨタ自動車社長)ほか自動車4団体トップが4月10日、インターネットで異例の緊急記者会見を行なった。

 その会見で豊田氏は、「私どもには空いている寮や保養施設がございます。例えば、トヨタグループだけでも、1500室程度、自工会会員各社合計で3000室程度の部屋が用意できる見通しです。現在は、海外赴任からの帰国者用に活用しておりますが、状況によっては、軽症患者が療養する施設として使っていただくことも考えてまいりたいと思います」と述べ、新型コロナウイルスに感染した軽症患者の受け入れ施設として、自動車関連各社が持つ保養所や寮の提供などの医療支援策を表明した。患者の搬送に使う車両の提供も行なう。

 豊田会長は「医療が崩壊すれば日本が立ち直れなくなる。スピーディで大きな動きにしたい」と、各社に協力を呼びかける考えを示した。提供する施設の所在地などは未定という。

 また、ニュースなどでも騒がしい「医療崩壊をさせないため、少しでも役に立てること」の具体的な施策として、「我々、自動車産業の手でマスクをつくっております。しかし、これは、まだ、皆様にお届けするほどの品質も、数量も確保できておりません。クルマの部品から作ったマスクの最初の試作は、実際、ゴワゴワでした……。改良も進んでおりますが、まずこれらは、自分達の身を守るために使ってまいります。その分、外からの購入を減らし、少しでも需給緩和に寄与できればと考えております」と、語ったうえで、各社の設備を生かして医療現場で必要なマスクなどの生産支援にも乗り出す方針を示した。

 加えて氏は、「人工呼吸器の製造を期待する声があることも認識しております。しかし、これは、人の命に直結する医療器具です。自動車も人命に関わる製品ですので命に関わるモノづくりが、どれだけ難しいかを我々は理解しています。簡単なことではありません。まずは、医療機器を作っている方々のところに行き、その生産を少なからず増やせるような、生産工程の改善など、我々のノウハウが活かせるサポートを始めています。

 豊田氏は、日本の自動車産業に従事する人は約550万人、日本の就業人口の約1割にあたるとし、自動車業界だけでなく、他の産業へ波及する力を持った、日本の産業別ではトップのレベルの産業だとしたうえで。

 その「自動車産業が自身、踏ん張って経済を回し続ける、そして、なんとしても雇用を守っていくことが崩壊を食い止めるための大きな力になると自覚している。そのために、絶対に事業を止めないよう努力する」、と敢えて会見で言及した。

 「それは医療崩壊を食い止めるためにも大切なことであるとも思っております」と結んだ異色の会見だった。(編集担当:吉田恒)