すべての人に平等な「色」を。「カラーユニバーサルデザイン」の取り組みに注目

2020年06月14日 10:33

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ロームは、機器のカラーユニバーサルデザイン化に最適な青緑色チップLEDを開発。1608サイズのLEDとしては業界で初めて、CUDOの認証を取得した

人間は感覚の8割以上を視覚に頼っていると言われている。中でも、「色」は重要な視覚情報のひとつであり、あらゆる場面で活用されている。代表的なものでは、信号機やトイレの性別表示、火災報知システムの表示灯や産業機器の安全性警告ランプなど、世の中の様々なモノが、その色を見ただけで直感的にイメージできるように作られているのだ。

 ところが、この色の感じ方は、すべての人が同じではない。さらに、色覚は病気や老いによって変わることもあるという。

 特定非営利活動法人カラーユニバーサルデザイン機構(Color Universal Design Organization 略称 CUDO)では 、この色覚の違いを、眼科によって正常色覚とされる「C型(Common)」、赤い光を感じる視細胞に異常がある「P型(Protanope)」、緑の光を感じる視細胞に異常がある「D型(Dueteranope)」、青い光を感じる視細胞に異常がある「T型(Tritanope)」、そして赤青緑3種類の機能のうち 1 種類しかない、もしくは全ての機能に異常がある「A型(Acromatic)」の5つの型に分類している。C型が一般的とはいえ、他の型も決して特別な色覚ではない。P 型、D型色覚者だけでも世界に約2 億人もいるといわれている。つまり、人によっては、色の組み合わせ次第で正しく情報が伝わらないこともあるということだ。不便なだけでなく、場面によっては、事故に繋がったり、命を危険にさらしてしまう可能性もある。

 そこで、こうした人間の色覚の多様性に対応し、より多くの人が利用しやすい配色を行った製品や施設、建築物、環境、サービス、情報などを提供するという考え方 「カラーユニバーサルデザイン (略称 CUD)」が今、注目を集めている。

 日本でも様々な場面でCUDの取り組みが始まっている。愛知県では昨年、教育現場にCUDの必要性を啓発する目的で 5つの学校と学校団体に、CUDの講座とワークショップを行うキャラバン隊が派遣されている。色弱模擬フィルタの「バリアントール」を使用して、教師が実際に色弱者が感じる色の見え方や見分けにくさを体験したり、色の区別がつきにくい赤いチョークの使用を控えるように指導したり、当該事業後も学校内での取り組みは継続されているようだ。

 また、東京大学分子細胞生物学研究所や社団法人日本塗料工業会(JPMA)、DIC 株式会社、CUDO 、石川県工業試験場らからなるカラーユニバーサルデザイン推奨配色セット制作委員会では、塗料用、印刷用、画面用の詳しい情報と、組み合わせる色の注意点、使用する上でのノウハウなどをまとめたガイドブック(第2版)のPDFファイルをWebサイト上で無料配布するなど、CUDの普及に努めている。

 具体的な製品としては、電子部品メーカーのロームが、業界初となる、1608サイズでCUDOの認証を取得した青緑色チップLED製品を発表した。同製品は、材料の配分など技術的課題をクリアすることで、特殊波長の青緑色を出せるようにしており、外装樹脂に新樹脂を採用することで、長寿命化及び実装性向上にも成功している。このため、車載や産業機器、病院向け機器の表示パネル、公共交通機関施設の情報掲示板など、とくに高信頼性が求められる場面において、幅広い用途で活用されることが期待されている。

 一方、多様な色覚に配慮した取り組みや製品開発も重要だが、最も大切なのは、国民一人ひとりの色覚に対する認識ではないだろうか。多くの情報を直感的に伝えてくれる「色」は、残念ながらまだ、すべての人に平等ではない。多様な色覚を持つ人たちがいることを知り、なるべくすべての人に色が正確に伝わる優しい世界が一日も早く実現することを願いたい。(編集担当:藤原伊織)