育鵬社歴史 全国激減も安倍氏の地元は逆に採択

2020年09月23日 05:45

 次年度から中学校で使用する歴史教科書に先の戦争を正当化する育鵬社の教科書。安倍晋三前総理の地元、山口県下関市が新たに採択したが、大阪市や四条畷市、愛媛県松山市などこれまで使用してきた自治体が採用をやめるなど、採用地区数は21地区から6地区に大幅減少する。

 憲法9条に自衛隊を書き込む安倍氏が提唱しはじめた改憲案への誘導とみられる記述のある『公民教科書』についても、19地区から4地区に激減した。

 日本共産党の機関紙赤旗は22日「私学を含めても育鵬社版が占める割合は歴史教科書で約1%、公民教科書では0・5%以下にとどまる見通し」と報じた。

 東京都千代田区の「子どもと教科書全国ネット21」は育鵬社の歴史教科書について「日ロ戦争」をとりあげ「同じ有色民族が、世界最大の陸軍国・ロシアを打ち破ったという事実は、列強の圧迫や植民地支配の苦しみにあえいでいたアジア・アフリカの民族に独立への希望をあたえました」などと記述しているが、他社の教科書では「日露戦争後の日本の韓国併合に、ネルーや孫文が失望し、日本に対する批判を強めたことにも言及しているが、育鵬社は都合の悪いことには触れていない」と正確性に欠く取り上げ方を指摘。

 公民教科書についても育鵬社が「憲法学習のまとめページに『改憲案』を載せ、議論させるALコーナーを新たに設けるなど一層改憲への誘導を強めている」としたうえで、具体例として憲法9条について「戦力は保持しないと書かれているため、自衛隊は違憲かもしれないといわれている」と「課題」に設定し、「改正案」として「9条1項を残しつつ、自衛隊を明文で書き込み、自衛隊の存在を憲法上にしっかり位置づける」と安倍首相(当時)の主張と同じ記述をしている」ことを取り上げ「憲法の遵守義務がある首相の発言、ないし特定の政治家の主張に検定意見がついていないのも恣意的」と問題点を提起していた。(編集担当:森高龍二)