今年4月から国家公務員の男性育休1ヶ月以上の取得促進がはじまり、約半年が経ったが、変化はあったのだろうか。コロナ禍の影響で自宅で過ごす時間が増える中、これまで以上に仕事と育児の両立、男親の家事や育児への参加が求められている。
そんな中、昨年、9月19日を「育休を考える日」と制定した積水ハウス株式会社〈1928〉が17日、「わが家をもっと、幸せに」をテーマに「イクメンフォーラム2020」をオンライン形式で開催した。また、同社ではこれに併せて、日本の男性の家事・育児実態を把握するため、小学生以下の子をもつ全国の20代から50代のパパとママ9,400人を対象にWeb調査を実施、「イクメン白書2020」として発表した。
フォーラムの冒頭では、積水ハウスの仲井嘉浩社長が登壇し、同社における「イクメン休業」の取り組みと進捗について話した。仲井社長は2018年5月、海外IRで訪れたスウェーデン・ストックホルムの街中で、多くの男性が育児に参加している光景を目にして感銘を受け、帰国後すぐに「男性社員1カ月以上の育児休業完全取得」を宣言したという。そして、同年9月1日には、3歳未満の子を持つ積水ハウス社員に対し、1カ月以上の育児休業を完全取得する「イクメン制度」(最初の1カ月は有給)の運用を開始している。
そんな同社が、男性の育児休業取得が当たり前になる社会の実現を目指してまとめた「イクメン白書2020」が前年に続いて発表されたが、その結果が大変興味深い。
配偶者からの評価や、夫の育休の取得経験など、4つの指標をもとに割り出した「イクメン力」のランキングで、佐賀県が見事1位を獲得し、2位に熊本県、3位に福岡県と、トップ3を九州男児が占めたのだ。今や、育児に積極的に参加することは「男らしさ」の一つでもあるのかもしれない。
また、同調査から、育休取得男性の育休満足度は81.8%と昨年の67.5%から大幅にアップしていることも分かった。さらに、家事・育児に幸せを感じている約8割の男性は、幸せを感じない男性に比べて、家事・育児スキルが高く、仕事に対する生産性や会社への愛着も向上しているという。これらの結果から、同白書では、男性社員の育休制度の推進は、本人や家族だけでなく、職場や企業、社会にもプラスになる「四方よし」であると結んでいる。
フォーラムの後半は、NPO法人ファザーリング・ジャパン ファウンダー・代表理事の安藤哲也氏の進行のもと、前内閣府男女共同参画局長の池永肇恵氏をはじめ、ジャーナリストの治部れんげ氏、積水ハウスの執行役員でダイバーシティ推進担当の伊藤みどり氏らでパネルディスカッションが行われ、イクメンの話題だけに留まらず、現在の育児事情が抱える問題点や、これからの子育てしやすい社会のための在り方にまで話がおよび、熱い意見交換が行われた。
また、パネルディスカッションには三重県知事の鈴木英敬氏もオンラインで参加し、三重県の育児への取り組みを紹介した。鈴木知事は、現職知事では初めて、第一子、第二子とも育休を取得したり、株式会社ワーク・ライフバランスが提唱する「男性育休100%宣言」に自治体の首長として初めて賛同するなど、育児に積極的なイクメン知事として知られている。そんな知事のもと、三重県では「みえの育児男子プロジェクト」を推進しており、自治体と地元企業、そして将来パパになる学生たちも一丸となって「パートナーとともに行う育児」の実現を目指しているという。
パネルディスカッションでは、企業、行政、個人、それぞれの立場から、男性の育児についての見解が述べられたが、中でも池永肇恵が示した資料では、「家事時間は単独世帯ではほぼ差が無いが夫婦になると女性は男性の2倍以上、育児時間も女性は男性の2倍」にものぼることや、「日本では(海外先進国に比べて)男性の有償労働時間が極端に長い」こと、「民間企業における男性の育児休業取得率は、上昇基調にあるものの、7.48%にとどまっている」ことなどが数値やグラフで示された。誰しもが何となく肌では感じていることかもしれないが、客観的な数値として見せられると、日本のイクメンはまだまだこれからであり、行政や企業、そして個人が抱える問題や課題が浮き彫りになる。
一方、積水ハウスの伊藤氏が提示した資料で、もっとも印象的だったのは「積水ハウスのパパたち写真展」の写真だ。育休中の男性従業員たちが赤ちゃんを抱え、共に笑い、奮闘する姿を映した数々の写真は、何にも勝る説得力がある。そこには確かに「世界一幸せな場所」があった。(編集集担当:藤原伊織)