コロナ禍においても尚、電気自動車(EV)市場が飛躍的な拡大を続けている。中でも、2020年度のヨーロッパ市場の伸びは大きく、EV、PHEVの売上は昨年比で200%近い規模が見込まれており、自動車販売台数におけるEV、PHEVの割合は通年で10%を超える勢いだという。
その背景には、ヨーロッパをはじめ、中国やアメリカの一部の州など、自動車市場の主だった国や地域で、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する動きが活発化していることがあげられる。
例えば、イギリスは2035年には国全体でガソリン・ディーゼル車の販売禁止を表明しているが、首都ロンドンでは、その5年前の2030年にはガソリン・ディーゼル車での中心地への乗り入れができなくなる。また、2040年にガソリン・ディーゼル車の新車販売を禁止するフランスでも、パリではそれに先駆けて2030年に禁止される予定だ。
これに伴い、世界の自動車メーカーやEV関連企業では、技術連携やEVプラットフォームを共有化する動きが慌ただしくなっている。今夏には、フォードとフォルクスワーゲングループがEV開発、商用車事業、及び自動運転における技術連携の詳細を発表。早くも2023年には、フォルクスワーゲンのEVプラットフォーム「MEB」を搭載した量産車がフォードブランドから誕生するという。
メーカーと直接取引をするTier1メーカーや電子部品メーカーも同様だ。日本の電子部品メーカーでは、市場での需要が急激に伸びているSiCパワーデバイス製品の開発で世界的な注目を集めるグローバル企業のローム株式会社が今年10月、兼ねてより交流の深い、中国・上海の総合車載Tier1メーカー・United Automotive Electronic Systems Co., Ltd.(以下UAES社)と「SiC技術共同実験室」の開設を発表している。
UAES社は、自動車部品メーカーとして世界的なシェアを誇るRobert Boschと、上海汽車系の中国メーカー中聯汽車電子との合弁企業。1995年の創業以来、エンジンコントロールユニットやガソリン車向けパワートレイン事業を手掛け、中国市場で高いシェアを誇る。ロームとは2015年より技術交流を行っており、本年にはロームのSiCパワーデバイスを採用した車載製品の量産化に成功しているという。
低損失かつ高耐圧のSiCパワーデバイスは、EVの急速充電のために欠かすことができず、既に充電スタンドや車載オンボードチャージャーへの搭載が進んでいる。航続距離の向上にも寄与することから、車載メーカーでは、メインインバータへの搭載に向けた開発競争が加速している。UAES社は、今回の共同実験室開設によって、SiCを中心とした革新的なパワーソリューションの開発を進めることが狙いだろう。
世界のEV市場では、日本の自動車メーカーは残念ながら、現状ではヨーロッパや中国のメーカーに少し遅れを取ってしまっている状況だ。しかし、ロームをはじめとする電子部品メーカーの評価は高く、信頼も厚い。今後、急速に成長するであろうEV市場で、日本の高度な技術力の存在感を示してほしいものだ。(編集担当:藤原伊織)