EV(電気自動車)の登場、普及と相まって新たな電池の研究・開発が進んでいる。現段階ではEV向け電池の主流はリチウムイオン電池であるが、その電解質は発火・爆発の危険性がある有機溶媒が使われており安全性に課題がある。
これに代わって未来の電池として期待されているのが全固体電池だ。全固体電池では液漏れのリスクが無くなり、また形状の制約も無くなるため、薄く小さくした電池を大量に搭載することも可能になる。全固体電池には大きく分けて「硫化物系」と「酸化物系」が存在するが、車載用のものは現在のところ硫化物系で、場合によっては硫化水素という有毒物質として漏れ出すリスクがあるという課題が残っている。
18日、市場調査業の富士経済が「次世代電池の世界市場」の調査レポートを公表している。これによれば、現状、全固体電池の市場として酸化物系と高分子系の市場が立ち上がっており、2020年の市場規模は34億円が見込まれている。当面は酸化物系、高分子系が市場をけん引する見込みであるが、将来的にはEV向けの需要を中心とした硫化物系の拡大が予測されており、錯体水素化物系は30年頃から市場が立ち上がると見込まれている。
当面、EV向けの主流と見込まれる硫化物系は、参入電池メーカーが20年代前半の実用化に向けて研究・開発を進めているが、現在はサンプル出荷が開始されたばかりだ。レポートでは「当面の採用は宇宙向けなどの特殊用途に限定されると想定される」としている。
未だ量産技術の確立などの面で課題が残るものの、今後はEV向け需要の増大が見込まれ、20年代前半には大手自動車メーカーから硫化物系を搭載したEVが発売される見込みで、25年頃から採用車種の増加が予想される。その後20年代後半には中国の電池、自動車メーカーの参入も想定され、市場はさらに活発化し、30年頃から本格的な普及段階に入るとレポートでは予測している。さらに、他モビリティにも採用が波及すると見込まれ、レポートは35年の硫化物系市場を1兆5775億円と予測している。
全固体電池では35年の市場規模は2兆1014億円、19年比で1106倍、容量ベースでは10万1660MWhと予測されている。非リチウム系電池は35年に555億円、30年以降にナトリウムイオン二次電池を中心に市場が本格化するものと見込まれている。
全固体電池の研究開発は日本が国レベルで実用化に向けて注力しており、今のところ世界をリードしている現況のようだ。(編集担当:久保田雄城)