コロナ禍で迎える、初めての年末年始。東京や大阪などの大都市圏で感染者が増え続けていることに加え、これまでのものよりもさらに感染率が高いといわれる変異種がイギリスで流行し始めるなど、まだまだ不安な状況は続き、例年よりも控えめな年越しとなりそうだ。
情報誌「東京ウォーカー」を発刊する、株式会社KADOKAWAのウォーカープラス編集部が、約2000人の読者を対象に実施したアンケート調査「年末年始の過ごし方実態調査」によると、忘年会・新年会は「行わない」が53%、年末年始は68%が「帰省しない」と回答し、年越しも「自宅で過ごす」が88%と、年末年始の外出を自粛する人が圧倒的に多いことが分かった。初詣も「オンライン」参拝を予定している人が多いそうで、2021年の正月は日本国民のほとんどが、自宅で寝正月を過ごすことになるのだろう。
では、あり余った時間を自宅でどう過ごすのか。まず思い浮かぶのが、テレビだ。
最近は、動画のサブスクリプションやゲームなどを楽しむ人も増えているが、それでも強いのは通常のバラエティ番組だ。とくに今年は、外出できない分、少しでも明るい正月気分を味わいたくて、楽しいバラエティを視聴する人は増えるのではないだろうか。その証拠に、先日放送された「M1グランプリ2020」の平均視聴率は、関東地区で19.8%、関西地区で29.6%と高い数字を記録している。ちなみに、これまで全16回の平均視聴率は、関東地区約15.6%、関西地区約24.9%だったらしい。
そんな中、実は今、スポンサー企業が放映する年末年始のテレビCM枠が、例年よりも取りにくい状況になっているようだ。それだけ今年は巣ごもりによるPR効果が見込めるということなのだろう。
年末年始のCMといえば、お馴染みの企業のCMでもお正月特別バージョンだったり、普段はあまり見ないようなBtoB企業のCMが流れたりと、なかなか面白い。
例えば、昨年話題になったのが、電子部品の大手メーカー・ローム株式会社のCMだ。空の上から眺める、山林や田園の自然風景、町や都市の街並みの風景だと思いきや、それがいつの間にか、半導体などが作り出す電子回路基板の風景に変わっているアレだ。情緒的かつ印象的な演出だけでなく、今、大人気の「Official 髭男dism」のアルバム曲「115 万キロのフィルム」がBGMに使用されたことでも、ファンを中心に大きな反響を呼んだ。ロームとしては、実に19年ぶりのテレビCMということもあって、気合の入ったCM作品だったのだ。好評だったにもかかわらず、昨年は関西2府4県限定で放映されていたらしい。そこで同社は今年の年末年始も、12月28日から1月3日までの7日間限定ではあるものの、関西圏に加え、関東1 都6 県でも再放映するという。
年末年始に多くのBtoB企業がテレビCMを放映するのも、実は単純な企業PRではなく、これから就活を開始する学生に企業を知ってもらうことや、就職が決まった子どもの親にCMを通して企業イメージを伝え、安心してもらう目的も大きいらしい。もちろん、新卒社員も、春から自分が通うことになる企業のCMを見て、士気が上がらないはずがない。企業の親心みたいなものだろう。そう思って視聴すると、確かにBtoB企業のCMは比較的「結局、何をやってる会社かよくわからない」ものが多い。普通の商品PR系のCMとは目的や対象が違うからだ。
おそらく今年は、ローム以外にも多くのBtoB企業のCMを目にすることだろう。でも、そのたびに誰かがどこかでホッとしたり、喜んだりしているのかと思えば、ストレスだらけの今年の年末年始も、少しは穏やかな心で過ごせるかもしれない。(編集担当:藤原伊織)