国会が始まった。菅義偉総理の施政方針演説に対する各党の代表質問が衆参の本会議で行われた。問題は菅総理の答弁。質問者は具体的な答え、総理の考えを求め、より具体的な回答を得るため質問を投げている。しかし答弁は施政方針演説の範囲にとどまり、具体的な答弁はない。見た目に「答えている」のだが、実際「答えていない」ことが多い。
例えば、22日の参院本会議での日本維新の会・片山虎之助議員の東京オリンピック・パラリンピックに関する質問。片山氏は「世論調査によると、東京オリパラを『中止すべき』が、『開催すべき』を上回ってきている。一番多いのは『再度の延期』だ。ワクチン接種が今の計画で順調に行われたとしても、外国人選手および観光客の入国に国民の不安は残る。オリパラについては現行の案で行くかどうかを最終的に判断する時期はいつと考えているのか」と最終判断時期を国民の前に明らかにするように求めた。コロナ禍の現況をみると、至って当たり前でシンプルな質問。
片山氏は「大幅縮小や無観客での開催などプランB、もう少し厳しいプランCをつくっておくべきではないか」とも質した。
これに、菅総理は「東京大会については安全・安心の大会にするため、IOCや各種競技会とも相談しながら感染対策に関する具体的内容を現在、検討している。IOCトーマス・バッハ会長とも東京オリンピックを必ず実現し、今後とも緊密に協力していくことで一致しており、東京都、組織委員会、IOCと緊密に連携して準備を進めてまいります」と答えた。
開催に関して「最終的に判断する時期はいつか」と尋ねているのに、「必ず実現する」と語るのみ、答弁していない。
英国・タイムズ紙は同日「日本政府が五輪を中止せざるを得ないと結論付けた」と報じた。政府はその事実はないと否定。ネット上では「中止して莫大な維持費を医療に回すべき」「夏のリオのカーニバルも中止決定なのに、五輪ができるわけがない」「精神論では開催できない」「国内もこの状態、海外もしかり。これでよくやると言える」など開催に否定的、むしろ批判的とみられる声が多数を占めつつある。「最終的に判断する時期はいつ」。少なくとも目安の時期を、総理は国民に、世界に、明らかに発信すべきではないのか。
菅総理が議員の質問に答えていないという問題。立憲民主党の枝野幸男代表は20日の衆院本会議代表質問後、記者団の取材に応じ、こう言った。「菅総理にGoToキャンペーンを年度末までに1兆円も支出する必要があるのですか?と尋ねたが、その答えはなかった。都合の悪いことには答えない姿勢のようだ」。
コロナ対策に関する質問に「残念ながら総理の答弁には一つとして前向きのものがなかった。専門家、あるいは自治体に、なにか責任も判断も丸投げをしているような答弁の繰り返しだった。当事者意識を感じられなかったことを大変残念に思っている」。
国会での質問、総理や閣僚の答弁はテレビやラジオ中継が入れば、政府の考えや政策を国民に明快に示す絶好の機会になる。
与野党の国会議員は時の問題を国民目線で政府から引き出すため、なるべく具体的に、質問内容を練り上げて質問している。質問は選挙で選ばれた国民の代表者として、国民に代わって質問している。それを踏まえれば、菅総理は国会議員の質問を『暖簾に腕押し』にしないでほしい。
行政府の長として真摯に答弁頂くことを期待している。一問一答の委員会が同じ答弁の繰り返し、答弁でない答弁になれば、国会の意味がなくなる。それは避けてほしい。(編集担当:森高龍二)