日本の「脱炭素」は可能か? 新エネ大賞受賞企業に学ぶ、日本の最新環境対策

2021年01月31日 09:23

脱炭素

積水ハウスは、卒FITを迎えた自社住宅オーナーの太陽光発電の余剰電力を買い取り、自社グループの事業用電力として活用する

「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」菅義偉総理大臣は昨年10月、初めての所信表明演説で脱炭素社会の実現に向けて、こう宣言した。

2015年に採択されたパリ協定で、温室効果ガスの排出量を今世紀後半に実質ゼロにすることなどが世界共通の目標として掲げられたことを受け、120を超える国と地域が2050年までの実質ゼロを目指して動き始めている。しかし、その目標は決してたやすいものではない。

 日本は、中国、アメリカ、インド、ロシアに次いで世界で5番目に多く二酸化炭素を排出している国だ。日本の温室効果ガス排出量が目標通りゼロを達成すれば、その影響は世界的にも大きい。現在、日本の温室効果ガスの排出量は年々減少傾向にあり、2018年度は、京都議定書の基準年である1990年に比べて2.8%減少、2013年度と比較して5年間で12.0%減少している。とはいえ、着実に減少してはいるものの、2050年にゼロにするのは極めて難しいペースでもある。これを打開し、実質ゼロを実現するためには、官民一体となった取り組みが必要だ。

 具体的にはどのような取り組みが必要なのだろうか。

 再生可能エネルギーなどの新エネルギーに関する商品や活動を表彰する、「令和2年度新エネ大賞」(新エネルギー財団)を受賞した先進事例をみていきたい。

 分散型新エネルギー先進モデル部門において「資源エネルギー庁長官賞」を受賞した積水ハウスは、CO2排出削減のため、省エネ・創エネなどにより、快適な室内環境を実現しながら年間の一次エネルギー収支プラスマイナスゼロを目指す住宅「ZEH」普及を推進しており、戸建住宅の実に87%を占める。

 さらに同社は、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の買取期間が満了、いわゆる「卒FIT」を迎える自社住宅のオーナーから太陽光発電の余剰電力を買い取り、自社グループの事業用電力として利用する「積水ハウスオーナーでんき」という取り組みを行っている。開始以降、卒FITを迎えたオーナーの50%以上からの申し込みがあり、その結果として、当初2040年を予定していた同社のRE100を10年前倒しで達成できる見込みだという。この「卒FIT電力を活用したRE100と顧客サービスの両立」による脱炭素社会実現への取り組み等が大きく評価された。

 また、「経済産業大臣賞」には、地域共生部門では、株式会社IHI、相馬市、パシフィックパワー株式会社による、再エネの最大限有効利用と災害対応「地域の再エネ最大利用を目指した相馬市スマートコミュニティ事業」と、豊橋市上下水道局による、複合バイオマスを100%エネルギー化することでCO2削減やエネルギーの地産地消を図る「豊橋市バイオマス資源利活用施設整備・運営事業」、導入活動部門では、日本地下水開発株式会社による地下水を熱エネルギーとして活用する「高効率帯水層蓄熱冷暖房システムの導入」、分散型新エネルギー先進モデル部門では、バンブーエナジー株式会社による、地域で未利用となっている竹とバーク(杉の樹皮)を有効利用する「竹とバークを燃料としたORC熱電併給設備によるバイオマスエネルギーの有効活用」が選出されている。

 これまで日本は、目標だけで具体的な時期も示されていなかったことから、国際社会では消極的だと批判を受けてきた。しかし、上記の優良企業に代表されるように、今、日本国内で様々な企業や団体、自治体などが脱炭素社会の実現に向けて積極的に動き出している。2050年には汚名を返上できることに期待したいものだ。(編集担当:藤原伊織)