自民党の佐藤正久外交部会長は東電福島第一原発事故による放射性物質のトリチウムなどを含む汚染処理水を海洋放出すると政府が決めたことに、韓国が国際海洋法裁判所に提訴し、裁判で最終判断が出るまで海洋放出しないよう暫定措置をとるよう要請することも含めた提訴案方針を示したことに、ツイッターで「虚勢そのもの」と発信。「国際海洋法裁判所に提訴すれば赤っ恥!韓国原発のトリチウム放出量が日本よりも大きいことが明るみになり、笑い物になるだけ」と反発した。
しかし、福島第一原発事故により排出される多核種除去設備(ALPS)処理水には原発の正常運転で排出される処理水には含まれない「11の核種」が含まれている。トリチウムの量的問題のみでないことは、同じ自民党の東京電力福島第一原発処理水等政策勉強会代表世話人の山本拓衆院議員も指摘している。
山本氏は「トリチウムのみの安全性の議論は正しくない」と指摘し「トリチウム以外にも『ヨウ素129』『セシウム135』『セシウム137』をはじめ12核種が完全には除去できないことが明らかになっており、このうち11核種は通常の原発からは排出されない。通常原発からの排出処理水と同様であるかのような、事実と異なる内容は既存の国内の原発立地地域にも不要な風評被害を新たに生じさせる」と危惧している。
国際環境NGOグリーンピース・ドイツのシニア原子力スペシャリスト、ショーン・バーニー氏は「炭素14はすべての生物に基本構成要素として組み込まれることから、長期的に見れば集団被曝線量の主な要因となる。このため炭素14は人間の細胞DNAを損傷する可能性がある。これについて日本政府と東電はタンクに貯蔵されている汚染水は『処理済み』でトリチウムしか含まれていないととれるような説明を続けている。炭素14は水中に含まれる他の放射性核種と合わせて、遺伝的損傷を引き起こす可能性があり、何千年もの間、危険な状態のままであり続ける。これが、(海洋放出)計画を中止しなければならない一つの理由だ」と海洋放出しないよう求めている。
裁判になれば「11の核種」が前面に出てこよう。日本政府の責任が問われることになりかねない。政府・与党はトリチウム以外の核種の問題、懸念に答えるべきだろう。(編集担当:森高龍二)