2020年初頭から始まった新型コロナウイルス感染症の世界的な流行の中で世界の政府は医療や経済を支えるために大規模な財政支出を行っている。
5月13日、日本総合研究所が「NIRAオピニオンペーパー、5月:日本のコロナ対応策の特徴と課題」を公表しているが、これによれば、日本は感染症の死亡率が低いにもかかわらずコロナ関連財政支出のGDP比が世界の中でも突出して高くなっている。しかし、その内容を見ると「債務保証」と「疑似財政活動」が半分以上を占め、中小企業向けなど政策融資などが主なもので、いわゆる「真水」の財政支出はそれほど大きいわけではない。とはいえ「真水」の対GDP比はアメリカに次いで多く、コロナ以前から存在していた財政構造問題の解決を遅らせることは間違いないであろう。
日本の非「真水」の財政支出は、中小企業への公的金融機関による資金繰り支援や民間金融機関の融資の保証など財政投融資関連のウエイトが高く、これらが企業を支え間接的に雇用を支えている部分が大きい。「真水」部分では、給付金などの家計や事業者支援が大きく、20年度の一般会計の支出項目で最も大きいのが特別定額給付金の約13兆円であった。しかし、家計統計を見ると20年の消費性向は前年を大きく下回っており、給付金による消費刺激効果は小さかったようだ。家計の預金残高は増加しており、給付金の多くは貯蓄に回ったと考えられる。
いずれにしろ日本をはじめ世界各国は国債発行を増やし、これを中央銀行が買い入れて金融を緩和し株価を高めに誘導、これが経済の下支えとなっている。各国とも公的債務残高のGDP比率は上昇しているが、日本のそれは突出しており、金融システムへの潜在的なリスクも拡大させている。
こうした株価上昇の下で資本収益率が経済成長率を上回る状況が続いているが、その恩恵を享受できる高所得層と貧困層の格差が世界的に拡大していると容易に想像される。コロナ禍でのデジタル化の進展で、アメリカではGAFAなどのICT関連の株価が特に上昇しており、これまでにもデジタル化で恩恵を受けてきた富裕層の資本所得の拡大がさらに加速していることは間違いない。
レポートでは「世界的に、デジタル化の可否でさらに格差が拡大している。特に、オンライン教育を受けられない子供たちが途上国に多く、深刻な問題となっている」と指摘している。日本においても同様の現象が起こっていることは容易に想像できる。(編集担当:久保田雄城)