経済産業省は先日、総合資源エネルギー調査会が取りまとめた「2021年度夏季の需給見通し・対策」を公表した。今夏は、安定供給に最低限必要な予備率3%をかろうじて確保できると予測しているものの、梶山経済産業大臣が記者会見で「ここ数年で最も厳しい見通し」と危機感をあらわにした。予想以上の猛暑や発電所のトラブルなどが発生した場合、途端に電力危機に陥る可能性がある。ましてや、4度目の緊急事態宣言の発令が決まり、家庭での電力消費もさらに増えるだろう。電力がひっ迫している直接の原因は、火力発電所の老朽化などによる供給力の減少の影響が大きいと言われている。政府は、発電所の効率的な補修点検を進めるのはもちろん、 現時点で供給力にカウントされていない自家発電などの精査と供給要請を進めるとともに、休止中の電源の稼働要請なども検討する方針だ。
こうなると、従来の発電システムに頼らない再生可能エネルギーがますます脚光を浴びてくる。一般家庭でも普及が進んでいる太陽光発電を筆頭に、風力、地熱、水力、バイオマスなどの再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しない低炭素の国産エネルギー源として、これから先、さらに重要性が増してくると考えられる。
産業界などでも、再生可能エネルギーへの取り組みは活発化している。
例えば、飲料大手のサントリーホールディングスが先日、国内だけでなく欧米の工場なども合わせて63か所の自社関連施設で2030年までに1000億円規模の投資を行い、現状30%程度しかない再生可能エネルギーによる電力の使用率を100%に高める方針を発表している。
産業部門に比べると、家庭部門での影響は小さく思えてしまうかもしれないが、実はそうではない。とくにCO2 排出量だけをみれば、2019年度の家庭での排出量は日本全体の 約14.4%を占めているのだ。この数値は電気以外も含むが、電気だけでも再生可能エネルギーに置き換われば、社会は大きく変わるだろう。
そこで環境省が中心となって進めているのが、高断熱化と省エネ設備による「省エネ」と、太陽光発電などの「創エネ」により、年間の住宅での一次エネルギー消費量の収支をゼロにするZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)だ。住宅メーカー各社もこれに賛同し、ZEHを推進しているが、中でも積極的なのが積水ハウスだ。同社は早くから、戸建住宅と賃貸住宅「シャーメゾン」のZEH化を進めている。2020年度の新築戸建のZEH比率は91%で、同社の2022年度までの目標を前倒しで達成。さらに賃貸住宅のZEHも2020年度だけで約3000戸を受注しており、ZEHの普及にかなりの力を入れている。
電力不足が心配される季節はとくに、一人一人が家庭やオフィスでの節電を心掛けることも大切だが、再生可能エネルギーの普及や住宅のZEH化によって、そんな負担を軽減することも可能だ。快適で暮らしやすい社会のために、環境を守るために、まだまだできることはありそうだ。(編集担当:今井慎太郎)