NHN Japanが運営する、日本発の無料通話・メールアプリ「LINE」の利用者数が先月、世界でついに1億人を突破した。その勢いは、国内だけにとどまらず、北米やヨーロッパなど海外にも波及している。2011年のサービス開始から19ヶ月での1億ユーザー突破は、ツイッターやフェイスブックに比べてもはるかに早く、驚異的なペースで成長していることが伺える。
それとは対照的に、ここ最近一時の勢いが感じられないのが、世界中で10億人のユーザーを持つとされているマンモスSNSのフェイスブックだ。グローバルマーケティングを展開するアウンコンサルティングがまとめた、世界40カ国を対象にした2013年1月時点のフェイスブック人口の推移によると、昨年9月時点の数値と比べフェイスブック人口が40カ国中13カ国で前回比マイナスとなっていることがわかった。中でも日本は1,552万7,700人から1,382万4,280人と10.97%も減っており、対象国の中で3番目の減少率となった。
この数字からも分かるように、国内SNS利用者がフェイスブック離れの傾向にあるのは確かなようだ。ユーザーの中には、退会しないまでも、単純に興味がなくなったり、情報を整理するのが面倒くさくなったり、さらには、友達が増えすぎてプライバシーを公開することに対して抵抗を持ち始めるなど、様々理由により、更新の頻度が少なくなったり、休止してしまう、いわゆる「SNS疲れ」がフェイスブックユーザーに出始めているようだ。
LINEは、身近な家族や友達など、親しい関係の中で、メッセージやスタンプ、無料電話などを使って、ダイレクトにコミュニケーションをとれるところが人気に火をつけた大きな要因だろう。それに対してフェイスブックは実名を登録することで、友人や知人を見つけやすく、また仕事上の人脈を広げやすいなど、自己アピールの場として多くの魅力的な要素がある。しかし、LINEは個と個の一対一のコミュニケーションを重視しているのに比べ、フェイスブックは、メッセージ機能を使えば個人同士のやり取りもできるが、個と多勢のコミュニケーション手段といった印象が強くあるのではないだろうか。実際、友達や友達の友達など、承認した人数が増えれば増えるほど、ニュースフィードには頻繁に更新情報が入り、それに反応することが手間になってしまう人が増えているようだ。
もちろん、友達リクエストを承認しなかったり、公開レベルを限定しておけば、そんな問題は簡単に解決できるのだが、実際には日本人の性格上、せっかく友達申請を送ってくれたのに承認しないのは失礼ではないかとか、友達が更新の内容には常に「いいね」をクリックしてあげないといけないという一種の責任感のようなものを感じてしまい、フェイスブック自体を気軽に楽しめなくなっているユーザーも少なくないように思える。つまり、フェイスブックというSNSの世界で生まれる人間同士のコミュニケーションにおいて、実社会に近い新たな社会が形成されてしまい、その社会の中で表現したりコメントしたりすることに対して、一種のストレスのようなものを感じてしまっているユーザーが増えていることが、国内でのフェイスブック離れにつながっているのではないだろうか。
しかし、ビジネスの場では、フェイスブックは企業や個人をアピールする有効な手段であることは変わっていない。特に就職活動する学生にとって今やフェイスブックは、企業の情報を得たり、自分自身をプレゼンテーションするための欠かせない武器になっているのは確かだ。
ここ最近になってフェイスブックは、電話帳に乗っている友達や知人の携帯に直接メッセージを送ることができる「facebookメッセンジャー」というアプリを公開し、その最新バージョンでは、無料通話機能も搭載されてなど、より直感的なコミュニケーション機能の充実を図っている。一方、LINEは昨年より「ホーム」と「タイムライン」という基本機能を追加するなど、よりソーシャルメディア化、プラットホーム化の道へと踏み出している。双方が互いの得意分野に足を踏み込み、真剣勝負の様相が強くなってきたが、サービスが同一化し、それぞれのメディアが築き上げてきた特長が薄くなってくれば、また新たに生まれてくるであろう強烈な個性を持った第3の存在にユーザーを奪われてしまう恐れもあるのではないだろうか。少なくとも我々のような利用者にとっては、機能が増えることや、競争相手が増えることは、提供されるサービスの向上にもつながり、選択の幅が広がって喜ばしいことではあるのだが。
一時の勢いはなくなったものの今尚SNSの絶対王者としての地位に君臨し続けている「フェイスブック」、安定した利用者数を誇り現在も世界中で拡大し続けている「ツイッター」、そして飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を成し遂げた日本初の「LINE」、さらに、それを追随するように次々に生まれている新たなサービス。今後SNSビジネスはいよいよ戦国時代へと突入していくのではないかと考えられる。先進国では、SNSは飽和状態に入っているという声もあるが、新興国ではまだまだ拡大する余地は十分にあり、世界規模で見れば安定期に差しかかったとは言えず、まだまだ成長期の段階にいるのではないだろうか。(編集担当:北尾準)