4野党共通政策で合意 政権選択へ高まる実効性

2021年09月12日 08:25

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公文書の改ざん、隠ぺい、廃棄、国会で延々繰り返された虚偽答弁など、民主主義の根幹を揺るがす事態を生じさせる土壌は二度とつくってはならない

 安倍内閣(2012年12月~20年9月)・菅内閣(20年9月~)の9年を総検証し、政権政党を選ぶ衆議院議員選挙に、与党・野党ともに統一候補による一騎打ちの構図になるよう野党に強く求めてきたが、立憲民主・日本共産・社会民主・れいわ新選組の4党が「日本の世の中に道理と正義を回復する、市民の命を守るために政治転換を」との市民連合の呼びかけにこたえ共通政策で合意したことは政権選択選挙の具現化へ大きく近づいたと高く評価したい。

反響の大きさは立憲に対するネット上の批判の多さで確認できる。自公政権にとって、地方組織力の弱い立憲が地方組織力のある共産と共通政策で合意した際の選挙戦の怖さを反映した結果とうかがえる。与党vs野党の一騎打ちの構図を、全国小選挙区で強化し、政権選択の機会を提供するよう期待したい。

 今回の野党4党の構図は自公政権との対比で、最も分かり易い整合性のとれたものになった。

 安倍政権下で「憲法9条解釈の変更」を閣議で決め、強行に成立させた安保法制に関しても、違憲部分に関しては廃止し、正常化を図るとしたほか、平和創出のため、あらゆる外交努力を行うことを共通政策とした。戦後の長い自民党政権でも、そこが憲法を遵守し、外交努力で進めてきた安全保障政策でもあった。ところが安倍政権以降、その質的変化は顕著になった。

 自民党総裁選挙に今月8日出馬表明した高市早苗元総務大臣は「迅速に敵基地を無力化することができた国が自国を守ることができる」と敵基地攻撃能力を保有することを公然と是とする姿勢を明らかにした。また「防衛関連研究費は非常に少ない」と防衛関連経費の増額を図る考えも鮮明にする。「自国を守るための必要最小限の戦力」。この視点は高市氏の発言からは全く見えてこない。防衛費は膨れ続けることになろう。

 高市氏は憲法改正にも強い意欲を示したが、憲法への自衛隊明記や天皇の権威、皇統にも強い思いをうかがわせた。安倍晋三前総理の路線を菅総理以上に色濃くする「タカ派」色が随所にみられるようだ。

 原発に関しても高市氏は小型原発開発に積極姿勢を示し、脱原発姿勢だった河野太郎行革担当大臣も総裁選出馬では「安全が確認された原発を再稼働していくのは、ある程度必要」とし「いずれ原子力はなくなる。来年やめろというつもりはない」。10日には「産業界も安心できる現実的なエネルギー政策を進める」と大幅にトーンダウンした。

 野党4党共通政策では「再生可能エネルギーの拡充で石炭火力から脱却し、原発のない脱炭素社会を追及する」と『原発ゼロ』を明らかにしている。

 野党4党の共通政策では格差・貧困の解消に関して「所得・法人・資産税制や社会保険料負担の見直し、消費税減税、富裕層への負担強化」を明記した。低所得層や中間層への再分配の強化をめざす。安倍政権下では大企業優遇・富裕層優遇税制が進んだ。

 その弊害が格差拡大と貧困を生んだ。これは行き過ぎた新自由主義の弊害だ。身内の岸田文雄前政調会長さえ認めているようだ。安倍氏は「新自由主義」をことさらに進めたが、岸田氏は総裁選出馬に際して「新自由主義から転換し、中間層の拡大を目指す」と強調している。

 自公政権と野党政権で特に対照的な違いは、安倍・菅政権時代の森友学園問題や桜を見る会とその前夜祭の問題、日本学術会議の問題に対し、メスを入れるか、入れないかの違いだ。

 立憲の枝野幸男代表は記者会見で政権を任されれば「政府としてチームをつくり、(これらの問題について)改めて調査し、公文書管理と情報公開の基準に基づいて」国民に示す考えを明らかにしている。

 高級官僚たちが国民を見ず、官邸の意向ばかり忖度する結果になった「内閣人事局」の弊害問題に関しても、公正な公務員人事を確立するために、内閣人事局の在り方を見直すのか、見直さないのか。

 自民党の石破茂元幹事長は内閣人事局の在り方を見直すと前回の自民総裁選挙の際に言われたが、今回、自ら出馬するのかどうかも明らかでない。野党4党は、今回の共通政策で内閣人事局の在り方を見直すとしている。どういう国を目指すのか。

 そもそも、公文書の改ざん、隠ぺい、廃棄、国会で延々繰り返された虚偽答弁など、民主主義の根幹を揺るがす事態を生じさせる土壌は二度とつくってはならない。今回の総選挙は非常に重要な意味を持つものになる。(編集担当:森高龍二)