「明けない夜はない」とは、シェイクスピアの戯曲・マクベスの中で語られる有名な台詞の一つだが、果たして、新型コロナウイルスのパンデミックも、そろそろ夜明けが近いのだろうか。
長かった緊急事態宣言もようやく解除され、町はにわかに活気を取り戻しつつある。東京都など首都圏4都県と大阪府でも10月25日、およそ11カ月ぶりに飲食店への営業時間短縮の要請が解除された。ほっと胸をなでおろす一方、これから本格的に訪れる秋の行楽シーズンや、年末年始を前に、再び感染の拡大を心配する声も多い。
とはいえ、せっかく長い長い自粛生活からようやく解放されたのだから、自宅に閉じこもってばかりいないで、少しは羽を伸ばしたいところ。そんな人たちに今、人気なのが、郊外にあるスイーツ工場だ。日帰りやプチ旅行のついでに立ち寄れて、子どもたちも喜ぶ。出来立てほやほやで提供される絶品スイーツは、「お取り寄せ」では味わえない、特別な満足感がある。
例えば、滋賀県近江八幡市にある「ラ コリーナ近江八幡」だ。江戸時代から続く、和菓子の老舗「たねや」。和菓子だけでなく洋菓子にも力を入れており、グループ店「クラブハリエ」のバウムクーヘンは、地元滋賀だけでなく、関西一円にその名をとどろかす、超有名スイーツだ。そんな「たねやグループ」のフラッグシップ店として誕生したのが「ラ コリーナ近江八幡」。店内では、工房を間近に見学しながら、クラブハリエの焼きたてのバウムクーヘンがいただける。屋根一面が芝におおわれたメインショップを中心にした緑の丘のような敷地一帯は、さながらお菓子のテーマパーク。広々とした中央の広場では、子どもたちの笑い声が絶えない。
岡山では、山田養蜂場直営の「お菓子工房ぶんぶんファクトリー」も人気だ。同店舗は苫田郡鏡野町、国道179号線に面する、いわゆる路面店。山田養蜂場のアンテナショップなのだが、ここでは自然の素材にこだわる山田養蜂場ならではの、上質の蜂蜜をふんだんに使った「ここでしか食べられない」絶品スイーツが人気だ。看板商品でもある蜂蜜を使ったソフトクリームやジェラートを始め、蜂蜜を使ったお菓子や飲み物を製造販売しているが、今冬のおすすめは何といってもこの秋に新発売されたばかりの「ハニーアップルパイ」。
パイの中から蜂蜜のジュレがあふれる「ハニージュレ」と、はちみつが入った特製カスタードクリームを楽しめる「ハニーカスタード」の2種類が、店舗内の工房で焼きたてで提供されている。ジュレとカスタードクリーム、ナパージュ(パイ表面のつや出し)に使用されている蜂蜜はもちろん、山田養蜂場の新鮮なオレンジ蜂蜜だ。店内に入った途端に芳ばしい香りがして、食欲をそそる。朝11時頃からの販売で、その日の予定分が無くなり次第終了なので、ハニーアップルパイ目当てなら、お昼前を狙って早めの時間に訪れた方が良いかもしれない。
兵庫県姫路市に2009年6月にオープンした世界で初めての「あずきミュージアム」も面白い。こちらはお土産などでも全国的に有名な回転焼き「御座候(ござそうろう)」 の本社工場で、縄文時代から日本人が食してきた、あずきの文化を学ぶとともに、あずき工場の見学や調理体験、あずき料理の数々を食せたりと、まさに「あずき尽くし」の一日が過ごせる。
ここで紹介したほかにも、秋の味覚を満たしてくれるスイーツ工場や工房は全国にある。コロナ禍のストレス発散と息抜きに、ぶらりと立ち寄って、心と小腹を満たしてみてはいかがだろうか。(編集担当:藤原伊織)