【コラム】9条の役割と現実的防衛装備での抑止力

2022年02月27日 09:28

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安全保障政策は憲法遵守の中で、現実的にできることを、できる範囲で、国民に対し透明性を持って議論を進めていかなければならない

 ロシアのプーチン大統領はウクライナ東部で独立宣言した親ロシア派地域の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」を一方的に「独立国」として承認し、この両国から要請があったことを口実に「集団的自衛」として、ロシア軍をウクライナ領土内に侵攻させ、首都キエフまで軍事作戦を展開する暴挙に出ている。「力による現状変更を狙う暴挙を国際社会は決して許してはならない」。国際社会は一致団結し、この愚かな行為を止める手立てを講じることが必要だ。

 岸田文雄総理は25日、日本政府としてロシアへの経済制裁を強化するため、ロシアの個人・団体へのビザ発給の停止、金融機関を対象とする資産凍結、半導体などの輸出規制など追加制裁を決定。米国はじめ国際社会と連携していくことを強調した。一方で、G7首脳声明でもエネルギー分野への規制はなかった。ロシアの侵攻行為を止めるためには一層の実効性ある対応を期待したい。

 一方、今回のロシアによるウクライナ侵攻に絡め「憲法9条」が話題にのぼる。他国から日本が侵攻されたら、戦争放棄を規定する「憲法9条」で自国を守れるのか、9条改正に反対する人らに答えを聞きたい、9条改正は必要だ、9条と核、どちらを持っている方が安全か、などなど、様々な声がある。

 しかし、間違ってはならない。9条が縛っているのは過去の侵略戦争の反省のうえに立ち、時の政権の暴走により二度と戦争の惨禍を招かないようにするということ。

 日本共産党の志位和夫委員長は「憲法9条をウクライナ問題と関係させ論ずるなら、仮にプーチン氏のようなリーダーが選ばれても、他国への侵略ができないようにするための条項が憲法9条」とツイッター発信した。日本の「時の政権」による他国への侵略行為を許さない、戦争を許さない規定が9条だ。
 
 そのため、侵略をさせない外交努力と万が一にも他国からの侵略行為が起きた場合に実力で阻止する「必要最小限の防衛装備」は状況を踏まえ、現実的に装備し、万一に備え、安全を担保する態勢づくりは必要だ。

 今回のロシアによるウクライナへの侵攻はそのことを感じさせるに十分だ。ただ、その対応が「敵基地攻撃能力保有」までも正当化する道筋に利用されてはならない。憲法の許容範囲にとどめるべきことは言うまでもない。現実的防衛装備が抑止力を高めることは確かだ。

 例えば、現実的装備の視点からは政府が22年度予算に入れる短距離離陸・垂直着陸のできるステルス戦闘機F35A(8機、関連経費含め1194億円)F35B(4機、関連経費含め789億円)に加え、F35Bの発着を可能とする護衛艦「いずも」の空母化、さらに、鹿児島県馬毛島で予定する空母艦載機(F35B)の離発着訓練を陸上で行う為の基地建設は、防衛のために必要と認めざるを得ないのだろう。

 F35B離発着のための「いずも」改修は昨年6月完了し、F35Bの排気熱に対応できるよう甲板が強化され、発着目印になる黄色いラインも甲板に引かれた。昨秋、アメリカ海兵隊のF35Bによる発着検証は成功している。

 F35Bに搭乗するパイロットが能力を発揮するには常に訓練しなければ実効性を伴わない。基地では米軍が空母艦載機の練習場にするだけでなく、自衛隊が練習するためにも必要不可欠なものになっている。

 安全保障政策は憲法遵守の中で、現実的にできることを、できる範囲で、国民に対し透明性を持って議論を進めていかなければならない。そのことに対しては、与野党異論ないだろう。ただ、今回のロシアのウクライナ侵攻を「9条」改定に絡めて改憲機運を高めようとする誤った行動は慎むべき。国民も、そこは冷静に受け止めることを期待したい。(編集担当:森高龍二)