当初より予想されていたように、コロナ禍での行動制限からの経済活動正常化の過程で世界同時の資源需要の急増が生じ、原油・エネルギー・穀物などを中心に原材料価格の高騰が起こっている。また、半導体の生産が追いつかず自動車や家電製品の工場が停止するという事態にまでなっている。こうした世界のサプライチェーンが混乱している中の2月24日、突如ロシアがウクライナへ侵攻し、西側主要国はロシアに対する厳しい経済制裁を行うこととなったが、もちろんこれはさらなるサプライチェーンの混乱と供給不足を生み出し、エネルギー・穀物を初めとする原料価格の高騰を増幅させている。
4月8日、帝国データバンクが4月上旬に1855社を有効回答とした「企業の今後1年の値上げに関する動向アンケート」の結果レポートを公表しているが、これによれば、過去半年間ですでに値上げを行った企業と今後1年以内に値上げ予定の企業の割合は64.7%と6割を超えている。内訳を見ると「2021年10月~22年3月の間にすでに値上げした」企業が32.7%、「22年4月に値上げした・する予定」が25.7%、「5月に値上げを行う予定」の企業は11.1%、「6月」は7.6%、「7~9月」が8.6%、「10~12月」2.6%、「23年1~3月」1.5%となっている。一方で、「値上げしたいが、できない」と回答している企業も16.4%存在し、約6社に1社は価格転嫁が難しい状況のようだ。自由回答欄には「安定した販売先があれば良いが、受注産業で競合もいるため、値上げすると競合に負けてしまう」(建材・家具、窯業・土石製品製造)といった声も聞かれ、値上げによる顧客離れを恐れ価格転嫁困難な状況にある様子がうかがえる。
値上げを行う企業について業種別に見ると、「飲食料品・飼料製造」が73.1%と突出して多くなっており、また「飲食料品・飼料製造」および「化学品製造」では「すでに値上げ済」企業と「予定」企業の割合の合計は8割超となっており、今後は川下産業に影響を及ぼす可能性が高い。既に、小売業や個人向けサービス業を含む「個人消費関連」でも43.2%が「4月以降1年以内で値上げ済み、または予定」と回答している。レポートでは「原材料高に加え昨今の人手不足や円安などによるコスト増は企業の収益力に大きな影響を及ぼす可能性があるなか、値上げの動きは続く」と見込んでいる。(編集担当:久保田雄城)