大インフレ時代到来。日本のみが脱デフレ策? 財政と日銀財務の健全化へ方向転換を

2022年04月20日 06:05

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日本総研がレポート「ウクライナ危機後・脱ディスインフレ時代の経済政策運営」。脱ディスインフレ時代、日本のみが脱デフレ政策を継続

 日本も含め欧米先進国を中心にウイズコロナでの経済活動の再開が推し進められている。急速な需要回復の中で原油を初めとするエネルギー価格や穀物価格が高騰し、世界経済は一転して大インフレ傾向へと反転したようだ。さらにロシアによるウクライナ侵攻はグローバル化の進展であるポスト冷戦構造の終焉を意味し、世界規模のサプライチェーンの再構築を迫られている。日本はこれまで巨額の財政赤字の下、脱デフレ政策による大胆な金融緩和政策を断行し、円安傾向を誘導してグローバル経済との連携を図ってきたが、時代は大きなターニングポイントに迎えたようだ。

 4月14日に日本総研(日本総合研究所)が同研究所副理事長・主席研究員山田久氏の政策提言レポート「ウクライナ危機後・脱ディスインフレ時代の経済政策運営~エネルギー転換、賃上げ成長、歳出・歳入一体改革に踏み込め~」を発表している。レポートでは「コロナ・パンデミックを経て米中対立は先鋭化し、ロシアのウクライナ侵攻により、世界が市場経済・民主主義で一体化していく『冷戦後』は終焉した」とする。中国との関係を断ち切ることは極めて困難である一方で「西側のロシア排除の構図は長引くことが予想される」とする。

 「脱ディスインフレ時代」の特徴としては(1)安全保障の制約が経済活動の自由に優先し、グローバル・サプライチェーンが複雑に再編されていく、(2)脱炭素化のもとで西側諸国のロシア排除が継続されるなか、資源・エネルギー価格の高位不安定化が常態化する、(3)技術革新の加速によりグリーントランスフォーメイションが進展、産業構造が大きく変貌を遂げる、といった3点が指摘される。

 こうした大転換の中、わが国の情勢変化への対応は大幅に遅れている。9割のエネルギー海外依存構造は円安・油価高騰による経常収支の悪化を誘発する。円安・経常収支悪化・物価上昇の進行を止めるためには、早期の段階で金融政策の正常化へ転換することが必須となる。その際に大きな障害になるのが巨額の国債残高とこれを保有する日銀の財務状況の悪化である。日銀財務の健全性確保のため緩やかな金利上昇を受け入れていく準備を始めるべきであるとレポートは指摘する。レポートでの提言の3本柱は(1)エネルギー自給率向上、(2)持続的な賃上げを可能にする産業・雇用総合政策パッケージ、(3)財政健全化の道筋の提示、となっている。(編集担当:久保田雄城)