政府・与党は原油高対策に石油元売り業者への補助金1リットルあたり「25円」の上限を「35円」に引き上げ、現在の全国平均基準価格「172円」を「168円」程度に引き下げる対応をする方針。トリガー条項適用による「減税政策」には余程、手を付けたくないことが見え、減税は頑なにやりたくないようだが、トリガー条項発動こそ、経済対策にもなる。「一度引き下げたら、元に戻しにくい」などというのはあたらない制度設計になっている。
トリガー条項は2010年税制改正時に創設された。総務省小売物価統計調査(月次)でガソリン価格の全国平均が1リットル当たり3か月連続して160円を超えた場合、揮発油税・地方揮発油税・軽油取引税の「当分の間」税率を引き下げ、現在徴収している1リットルあたり「53円80銭」のうち、「25円10銭」を減免するとなっている。1リットル130円を3か月連続して下回るようになれば、元に戻す制度設計で、非常に分かり易く、国民に対して透明性の高い制度だ。
ガソリン価格から「25円」の減税があれば、ガソリン利用者に直接、恩恵があり、景気・経済対策にも波及効果が大きいと期待される。石油元売り業者への補助金交付より、はるかに国民には分かり易く、透明性が高い。国民民主党は実現に全力で当たれ、と応援したい。
また全国平均基準価格「172円」を「168円」程度に引き下げることに関しては、石油元売り業者への補助金額の上限引き上げの際に、トリガー条項発動水準の160円に、この条項が創設された後に引き上げられた消費税率5%分を加味した水準を標準価格に設定して取り組むことを19日の自民・公明・国民による3党検討チームで合意していた。そのため、160円に5%上乗せし「168円」を全国平均基準価格にすることにしたのだろう。
景気浮揚につながる対応なら、トリガー条項を発動し、ガソリン利用者に直接還元される減税を実施したうえで、なおかつ、上昇が止まらないようであれば、石油元売り業者への補助金交付で価格高騰を抑制していくのが、国会の意思決定により成立した「トリガー条項」という「法の順守」「国会意思の尊重」に則することになる。
3党の検討チームは「トリガー条項は補助金と異なり、揮発油税・地方揮発油税・軽油取引税がかかっていない重油や灯油に対応できない」と適用を渋る課題にあげる。しかし、重油、灯油に対して補助金をつければいいだけの話、どこが課題なのか。
また「ガソリンスタンドと元売りの顧客対応を含めた事務負担が大きい」と事務負担増を課題にあげる。事務負担に配慮するなら、来年10月導入する「インボイス制度(適格請求書等保存方式)」こそ、中小零細業者全体にとてつもなく事務負担を強いる制度で、これこそ配慮し、実施を延長するか、全国商工団体連合会や中小企業家同友会全国協議会、全国中小企業団体中央会、東京税理士政治連盟など多数の団体が求めるよう「廃止」にすべき。
政府・与党がガソリンスタンドと元売りの顧客対応を含めた事務負担が大きいなどをトリガー条項発動の課題にあげるのはご都合主義としか映らない。
インボイスでは中堅、大手企業は取引相手が「適格請求書を発行できない免税事業者」と分かれば、事業者を使わない、あるいは消費税分を値引きさせる、課税事業者になるよう求めるなど、トリガー条項発動以上に現場の混乱や弊害が表れると想像される。政府・与党は国民、中小零細事業者の実態に目を向けた対応こそ、行うべき。
今回の補助金上限引き上げ、全国平均基準価格の引き下げ、実際に小売価格にどの程度補助金交付が反映されての価格なのか、トリガー条項を発動しないのであれば、ガソリンスタンドの店頭小売価格に「補助金なしの場合の価格と補助金交付を受けての価格を、消費者が容易に分かるよう、両方を店頭表示することを義務付け、トリガー条項発動までは最低限、透明性を担保するようにすべき。
自民、公明、国民の3党検討チームは今後も検討を進める方針のようだが、発動実現へ結論を導き出すことを期待する。(編集担当:森高龍二)