賃上げと最低賃金1000円 問われる実効性

2022年06月09日 06:25

 政府は7日閣議決定した骨太の方針で賃上げ・最低賃金について「今年は、ここ数年低下してきた賃上げ率を反転させたが、ウクライナ情勢も相まって物価が上昇している。賃上げの流れをサプライチェーン内の適切な分配を通じて中小企業に広げ、全国各地での賃上げ機運の一層の拡大を図る」と記述。

 そのうえで「中堅・中小企業の活力向上につながる事業再構築・生産性向上等の支援を通じて賃上げの原資となる付加価値の増大を図るとともに、適切な価格転嫁が行われる環境整備に取り組むほか、抜本的に拡充した賃上げ促進税制の活用促進、賃上げを行った企業からの優先的な政府調達等に取り組み、地域の中小企業も含めた賃上げを推進する」としている。

 また「新しい資本主義実現会議において、価格転嫁や多様な働き方の在り方について合意づくりを進めるとともに、データ・エビデンスを基に適正な賃金引上げの在り方について検討を行う」とした。

 また方針では「人への投資のためにも最低賃金の引上げは重要な政策決定事項である」とし「最低賃金の引上げの環境整備を一層進めるためにも事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援や取引適正化等に取り組みつつ、景気や物価動向を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が1000円以上となることを目指し、引上げに取り組む」とし「最低賃金について、官民が協力して引上げを図るとともに、その引上げ額については公労使三者構成の最低賃金審議会で生計費、賃金、賃金支払能力を考慮し、しっかり議論する」と明記した。

 ただ、賃金引上げは現実、アベノミクスにおいても成果があがっていなかった。大企業が空前の内部留保を保持する結果になっているが、日本の勤労者の賃金は30年前とほぼ同水準、OECDデータでも韓国約2倍、米国、英国4割以上の増なのに、日本は数パーセント増にとどまっている。岸田内閣でどこまで実効性があげられるのかが問われそうだ。(編集担当:森高龍二)