アキュラホームが日本初の8階建て純木造ビルの起工式で「Re:Treeプロジェクト」始動を発表

2022年08月25日 07:37

組子格子耐力壁

日本初公開の8階建て純木造ビルで採用される見せる壁「組子格子耐力壁

 木造建築を手がける株式会社アキュラホームが、日本初の8階建て純木造ビルを創業地の埼玉県に建築し本社を新宿から移転する。新社屋は、アフターコロナの新たな働き方に加え、ショールーム、宿泊体験ができるモデルハウスも併設し、2024年の完成を目指す。8月20日に行われた起工式では、鉄とコンクリートのまち並みから木のまち並みを復興する「Re:Treeプロジェクト」も発表した。

 同社の宮沢俊哉社長は「埼玉県の地の利を生かしながら、全国のまち並みが木造建築になるようにまい進したい。森の国ニッポン、モノ作りニッポンの素晴らしい匠の技を持って世界に発信したい」と、中規模木造建築の普及を語った。

 日本の住宅建築の約9割は木造で、そのうち7割以上は全国の工務店が建築している。非住宅建築においては、3階建て以上のほとんどが非木造で建築されている。そのため同社では多くの工務店が、3階建て以上の非住宅建築を従来の技術の延長で施工できるようにすることが、都市の木質化を推進させることにつながり、脱炭素社会に寄与すると考えている。新社屋の純木造8階建てビルでは、中規模木造建築の2/3以下のコストに抑え、全建築工程のCO2排出量を非木造建築物の1/2以下に抑えている。

 いままでの中規模木造建築では、建築費が割高という「コストの壁」、一部の施工会社でしか建築できない「工法の壁」、木造は耐火・耐震性に劣るといった「偏見の壁」という3つの大きな壁があった。同社は全国の3000社の工務店と連携した「アキュラシステム」で、高品質かつ適正価格で住宅を提供。また東京大学や京都大学と共同研究することで、木造建築における耐震、倒壊、耐火、耐風実験を実施し、高い性能を追求している。

 木造建築の耐震、耐風に重要な役割を果たしている耐力壁には、「耐震性を高めるには多くの壁が必要」「採光が取れない」「閉塞感」という課題があった。今回、初披露した「組子格子耐力壁」は、壁倍率30倍の高耐力壁(一般耐力壁の12倍相当)にもなり、格子にすることで採光が取れ、外観を損ねない見せる壁を実現。さらに接合金物の使用を大幅に削減することでコストダウンも可能にしている。

 列席した埼玉県の大野元裕知事は「日本で初の在来軸組工法による8階建て木造建築の画期的な工法が、フラッグシップとして埼玉県に建築されることや、玄関のオブジェ、格子耐力壁に埼玉県産材を使っていただけることは大変ありがたい。また街の木質化を図るという展望は、SDGsを推進するうえでも欠かせない取り組みである」と語った。

 今後は川崎市に10月に完工する日本初の木造5階建てのモデルハウスを皮切りに、各エリアにも建築し、日本全国に中規模木造建築を普及していくという。(編集担当:鈴木博之)