世界初、5階建て純木造ビルの実大耐震実験で国の基準を上回る実証データを取得

2022年10月02日 10:37

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アキュラホームグループは世界で初めて、5階建て純木造ビルの実大耐震実験を実施。国の基準を上回る震度7クラスの実証データの取得に成功した

 気象庁の発表によると、日本国内で2021年に震度1以上を観測した地震は2424回で、その内の10回が最大震度5弱以上を観測している。震度5弱といえば、ほとんどの人が恐怖を感じ、何か物に掴まらないと歩くことすらも困難になるほどの地震だ。家具も固定していないものは移動したり、倒れたりする恐れもある。古い住宅だと破損や倒壊する可能性もあるだろう。実際、昨年は被害を伴った地震が7回発生しており、2月に福島県沖で震度6強を記録した地震では、死者2人、負傷者186人、住家全壊123棟、半壊1937棟という大きな被害が出ている。

 阪神淡路大震災、東日本大震災を経て、日本では地震に対する防災意識が高まり、住宅やビルなども耐震性の高いものが建てられるようになった。しかし、戸建て住宅よりも大きな中小規模建築となると、鉄骨造やRC造のものがほとんどだ。

 木造建築は日本の気候風土に適しているだけでなく、耐震性能や断熱性、コスト面でも優れている。さらには建築時に二酸化炭素排出量が少ないことも、これからの脱炭素社会にむけて非常に有益なメリットがある。しかし、求められる耐震性能や耐火性能を実現するためには多くの費用や技術力が必要となることが課題となっていた。その為、中規模木造建築では木と鉄骨を併用するハイブリッド構造が使用されていたり、免震装置を設置されたりするなどの対応を余儀なくされていた。

 そんな中、木造建築を手がけるアキュラホームグループが、東京大学、京都大学の各専門家との共同研究により、世界で初めて、木造軸組工法による耐震構造の「5階建て純木造ビル」の実大耐震実験を国立研究開発法人防災科学技術研究所が有する「実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)」にて実施し、国の基準である地震波で倒壊・損傷なしの実証データを取得した。

 アキュラホームは以前から日本の伝統的な工法である木造軸組工法にこだわり、過去4度にわたる実物大耐震実験や、同社住宅商品を使った実物大倒壊実験、耐力壁の強度を競い合う「壁-1グランプリ」への参加など、実証実験を伴った研究開発に取り組んできた。また、それらの知見から「普及型純木造ビル」のプロトタイプとして、8階建て純木造の新社屋の着工も開始している。

 今回の実験では告示波(建築確認の基準となる地震波)と、それを上回る震度7クラスの地震波を計6回加振。その結果、非常に高い耐震性が確認されている。実はこれまで、純木造ビルの安全性を確認するための根拠となる実証データが存在しておらず、建築確認申請の審査において、構造上のデータが少なかったため審査に時間がかかってしまうなど普及の壁があった。今回の実証実験によって、今までにない実証データが取得されたことで、今後、日本国内での中規模木造建築の普及に弾みがつくことが期待できそうだ。(編集担当:藤原伊織)