電力会社が料金の値上げに踏み切るとの報道と前後して、「光熱費が高くなった」という声が上がり始めている。現在、火力発電を主に稼働している我が国にとって、コロナ禍やウクライナ情勢、更には円安の影響を受けた燃料調達費の高騰は、頭の痛い問題だ。なるべく早い解決を祈りたいが、電気代が高くなる理由はそれだけではない。そもそも電気代は、夏よりも冬の方が高くなることはご存知だろうか。
総務省統計局の家計調査によれば、3人世帯の夏の電気代(2020年7~9月)の平均額が9,772円なのに対し、冬の電気代(2020年1~3月)の平均額は13,034円となっている。調査は1人世帯から5人世帯まで取られているが、いずれも冬の方が夏を上回っている。部屋と外の温度差が大きい方が電力を消費するため、自ずと冬の方が電気代が高くなる。その上、寒冷地であれば灯油の使用もあるので、冬の光熱費の高騰はある程度仕方ないだろう。
更に興味深いデータを提供しているのが、大手ハウスメーカーの積水ハウス株式会社研究機関である住生活研究所だ。暮らしにおける「幸せ」を研究する機関として、住まいやライフスタイルに関する様々な調査、研究を行っている同研究所から発表された、「自宅における冬の寒さ対策に関する調査(2022)」によると、回答者の半数以上が光熱費の上昇を実感していると共に、コロナ禍で高まった冬の在宅志向も浮き彫りになっている。約3年間にもわたるコロナ禍の感染対策が、染みついた結果とも言える。
在宅時間に比例して、電力消費量は上がることが予想されるので、各家庭での節電対策についても調査している。「就寝中の暖房器具の不使用」や、「暖房の設定温度を下げる」などが上位に挙がっている一方、約2割は「何も対策していない」を選択しているなど、対象者の迷いも伺える調査結果となっている。その他、温度の急激な変化で血圧が大きく変動することで、心筋梗塞や脳卒中といった血管の病気などを引き起こすヒートショックに関する調査では、約9割の人が認知しているが、その内の実に3人に1人は対策を取っていないことがわかった。自宅のことでついつい後回しになってしまうのも理解できるが、何か起こってからでは遅い。そんな見落としがちな問題に気付かせてくれる調査結果だ。
コロナ禍に関して言うなら、以前よりもある程度ウイルスのことがわかってきており、屋外の人が集まらない場所では、マスク着用も緩和されている。自宅の周辺や公園を散歩するなど、身体を動かすことで体温も上昇し、自宅の暖房器具の使用を控えることもできるだろう。電力に頼らない温かい飲み物やあったかグッズも有効だし、湿度のコントロールで体感温度を上げる、空気の流れを循環させて暖房効率を高めるなど、時代に合わせた光熱費とのお付き合いが、重要になってくるだろう。
「ある程度の光熱費の上昇は致し方ない」と諦めるのは簡単だが、燃料調達費の高騰については、世界情勢も絡んで来ているので、全く先行きが見通せない状況だ。このような調査などをヒントに、身の回りの手が届く範囲から、光熱費節約と健康にも影響する温熱環境の改善に取り組んでみてはいかがだろうか。(編集担当:今井慎太郎)