日本の主要産業の一つである自動車産業。その動向は日本経済に直結する。最終製品の自動車はもとより、積載される個々の半導体部品にまで、エネルギーコストの低さや環境に対応した競争力が求められている。
富士経済が2024年9月に発表した「2024年版 HEV,EV関連市場徹底分析調査」によると、2024年の世界新車販売台数はHVが前年比16.3%増、PHVが同28.2%増で着地すると見込まれる一方、EVは主要国で助成制度が終了したこと、また、電気料金の高騰などもあって伸び悩み、同4.4%増に留まると見込まれていた。2024年を終えたいま、関連業界の直近の決算を見ても、この着地見込みから大きく外れてはいないだろう。とはいえ、自動車メーカー各社は多額のリソース投資を行っているため、開発の軸足は引き続きEVに置くことになると富士経済は推測しており、2025年以降は順調に拡大し、2040年には販売台数が2023年比で5.7倍の5713万台にまで達すると予測している。
また、EVと同様に普及が進む先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術、コネクティビティの進歩もあって、それらを支える電子部品分野における日本企業の活躍が期待されている。
例えば、ローム株式会社は、足元のEV減速に伴って業績は少し低迷してはいるものの、車載向けのSiC・IGBTといったパワー半導体から、高精細なセンシングに適したレーザーダイオード、次世代コックピット向けのPMIC、高速車載通信システムに最適な保護ダイオードなど、アナログIC・ディスクリート半導体まで豊富なラインナップを持つことで、グローバルな顧客基盤を確立している。安定した供給体制を武器に今後も伸びる可能性が十分に期待できるだろう。
そんなロームを含む国内外の半導体メーカーと積極的に協業連携し、モーターやインバータ、バッテリーなど電装化技術で圧倒的なシェアを誇っているDENSOも、車載半導体メーカーの側面を持っている。CPU、GPUに次ぐ新しい半導体「DFP」の開発に取り組んでおり、膨大な情報を即断即決で処理する能力が求められるADASや自動運転車両への搭載、普及が期待されている。
自動車メーカーのトヨタ自動車は、世界のEV市場の減速と、普及ペースが鈍化していることを受けて、2026年のEV生産台数を100万台程度に縮小し、次世代EVの生産開始時期を2027年半ばに延期することを発表しているが、その一方で2030年までに、トヨタとレクサスブランドで30車種のEVモデルをグローバルに展開し、年間350万台の生産体制を整えるとしている。また、2035年にはレクサスの新車販売の全てをEVにする方針を掲げていることなどから、次世代EVの生産開始時期延期は消極策ではなく、開発に余裕を持たせて性能の向上を図るためとの見方も多い。
EV市場の低迷などで自動車市場は現在、混沌としているが、そんな中でも日本企業は堅実なものづくりに励んでいることは心強い。短期の市場動向だけで一喜一憂するのではなく、長期的な視点で日本企業の今後の巻き返しに期待したい。(編集担当:藤原伊織)