高輪に「令和のトキワ荘」、JR東日本が2027年開設 住む・創る・発表、仕事の接点も

2026年09月08日 18:51

JR東日本

JR東日本が2027年3月に開設する若手クリエイター・アーティスト向け拠点『LINKSHINE』の外観イメージ。住居13戸のほか、アトリエオフィス8戸、スタジオオフィス13戸を設ける(画像:JR東日本)

今回のニュースのポイント

JR東日本は8日、高輪ゲートウェイシティ近くに若手クリエイター・アーティスト向けの住居・アトリエ/スタジオオフィス「CREATIVE PLATFORM LINKSHINE Takanawa Gateway」を2027年3月に開設すると発表しました。同社が「令和版トキワ荘」と位置付ける地上9階建て(全34戸)の施設です。単にクリエイターが集まる住居(13戸)にとどまらず、アトリエ(8戸)や高防音スタジオ(13戸)での制作、常駐スタッフによる交流促進、高輪エリアの商業施設やイベントでの作品発表、さらにJR東日本グループのアセットを活用した仕事との接点までを一体的に提供するエコシステム構想です。

本文
 かつて昭和の漫画家たちが同じ屋根の下で切磋琢磨した「トキワ荘」の現代版を、鉄道大手が最新の街づくりの中に組み込みます。JR東日本は8日、東京都港区高輪に若手クリエイターやアーティストが集い・暮らし・創作する拠点「CREATIVE PLATFORM LINKSHINE Takanawa Gateway(LINKSHINE)」を2027年3月に開設すると発表しました。同社はこの取り組みを、新たな文化や芸術表現を生み出す「令和版トキワ荘」と位置付けています。

 施設の所在地は東京都港区高輪二丁目で、泉岳寺駅から徒歩3分、高輪ゲートウェイ駅から徒歩7分に位置します。建物は鉄筋コンクリート造の地上9階建てで、延床面積は1999.64平方メートル、総戸数は34戸です。全34戸の内訳は、居住用の「レジデンス」が13戸、制作空間となる「アトリエオフィス」が8戸、音を伴う表現に対応する「スタジオオフィス」が13戸で構成されます。

 住居機能となるレジデンス(13戸、14.35~47.96平方メートル)は、ワンルームを基本に作り付けの作業机やクローゼット、シャワー、洗面台、トイレを完備しています。単なるイベントスペースやオフィスではなく、実際に生活の拠点を置ける構造となっている点が特徴です。

 現代の多様な表現活動に合わせ、制作機能も細分化されています。アトリエオフィス(8戸)は小規模オフィスや美術・工芸などのアトリエとして利用できるフレキシブルな空間です。スタジオオフィス(13戸)は遮音・吸音性に配慮した高防音仕様となっており、配信クリエイターの収録・編集をはじめ、楽器練習、ダンス練習、小規模レッスンなど音を出す表現活動に対応します。

■コミュニティとバックオフィス支援

 令和版としての最大の特徴は、施設内に「ブリッジコミュニケーター」と呼ばれる専任スタッフが常駐することです。入居者の創作領域や活動状態を把握したうえで入居者同士を相互につなぎ、専門分野を越えた共創を促します。また、実績のある有識者によるワークショップに加え、経理や法務などバックオフィス業務の知識向上を図るプログラムも提供されます。制作活動だけでなく、クリエイターとして活動するうえで必要となる実務面の知識向上も支援対象にしています。

 入居・参画の対象は、若手クリエイター個人に限定されません。支援を行うプラットフォーマーやクリエイティブ系スタートアップ、芸術系大学のサテライトキャンパス、各国大使館の文化部門などの参画も想定されています。創作する個人とそれを支える組織を同じ場所に集めることで、新たなプロジェクトの発生を狙います。

■発表の場と仕事への参画機会

 クリエイター支援において課題となりやすい「発表の場」についても、街全体と連動した仕組みが用意されます。施設内のラウンジや展示スペースにとどまらず、高輪ゲートウェイシティ内の文化施設「MoN Takanawa」や屋外広場、同地区で開催されるイベント(アート・音楽・テクノロジーの祭典「NU Festival」など)を活用した展示・発表機会が提供されます。

 さらに、JR東日本やブリッジコミュニケーターのコーディネートを通じ、JR東日本グループが展開する駅やホテル、商業施設、ミュージアムなどのアセットを舞台としたイベントや広告物の作成など、クリエイティブへの参画機会が得られる可能性も示されています。住居と制作環境の提供にとどまらず、仕事につながり得る活動や発信の接点まで、JR東日本グループのアセットを活用して広げる構想です。

 高輪ゲートウェイシティにおいて、ビジネス創造拠点「LiSH」がテクノロジー分野のイノベーションを担うのに対し、今回の「LINKSHINE」は文化・芸術表現のイノベーション拠点として両輪を成す位置付けとなります。

■気になる「高輪での生活コスト」

 構想の全容が示された一方で、現実的な運用条件において未公表の要素も残されています。それは、若手クリエイターが実際に負担する賃料や利用料金です。

 都市部、それも都心の一等地である高輪エリアにおいて、レジデンスの賃料やアトリエ・スタジオの利用料金がいくらに設定されるかは、発表資料には記載されていません。JR東日本は8日14時よりオフィシャルサイトを開設し、入居希望者の問い合わせ受付を開始しました。応募多数の場合は選考が行われる予定です。

 昭和のトキワ荘では、若い漫画家たちが同じ場所で暮らし、互いに刺激を受けながら作品を生み出しました。令和の取り組みでは、「住む・創る・つながる・発表する・仕事との接点をつくる」というプロセスが仕組みとして提示されています。2027年3月の開設に向け、この「令和版トキワ荘」が若手支援として実効性を持つのか、今後の賃料設定や入居・選考の具体的な条件、そしてどのような才能が集まるかが注目されます。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)