納付率は改善、それでも支える人は減っていく――国民年金が映す人口減少の現実

2026年07月24日 17:40

画・コロナ・リストラ再加速。既に昨年の2倍超。赤字リストラが増加。外食で急増。

国民年金の納付率は改善が続く一方、制度を支える第1号被保険者数は減少している。人口減少社会では「率」と「実数」の両面から制度を見ていくことが重要となる。(写真はイメージ)

今回のニュースのポイント

厚生労働省が公表した令和7年度の国民年金加入・保険料納付状況では、第1号被保険者の最終納付率が85.6%となり、13年連続で上昇して過去最高を更新しました。一方で、第1号被保険者数は減少が続いており、「納付率の改善」と「制度を支える人の減少」が同時に進む構図が浮かび上がっています。今回の統計は、納付率だけでは見えにくい人口減少社会における年金制度の課題を映し出しています。

本文
 世間でしばしば語られる「若者の年金離れ」といった印象とは異なり、国民年金保険料の納付率は着実な改善を続けています。しかし、厚生労働省が24日に公表した最新の統計が示している本当の論点は、単なる納付率の高さにとどまりません。納付率という割合が向上する陰で、制度を直接支える第1号被保険者の人数そのものが減少し続けているという、人口減少社会の構造変化が浮き彫りになっています。

 まず、公表された統計を整理します。過去2年分の未納分を含めた令和7年度の「最終納付率(令和5年度分保険料)」は85.6%となり、前年度から1.1ポイント上昇しました。これは13年連続の改善であり、比較可能な平成16年度以降で過去最高を更新しています。当該年度の「現年度納付率(令和7年度分保険料)」も79.6%と14年連続で上昇し、8割に迫る水準です。さらに、24か月保険料が未納となっている未納者数は67万人となり、前年度から5万人減少しました。数字の上では、納付状況の改善傾向が明確に表れています。

 しかし、今回の統計で本当に注目すべきなのは納付率ではありません。保険料を納める主体である国民年金第1号被保険者の総数は1,357万人(令和7年度末)となり、減少傾向が続いています。「納付率(率)」という指標が過去最高を更新する一方で、「制度を支える人数(実数)」は確実に縮小しているのが現実です。

 なぜこのような構図が生じるのでしょうか。国民年金の第1号被保険者は、自営業者やフリーランス、学生、無職者などで構成されます。少子高齢化や就業構造の変化などを背景に、第1号被保険者の母数そのものは縮小傾向にあります。つまり、個々の対象者が義務を果たす割合(制度への参加率)は高まっているものの、人口構造の変化によって土台となる参加者の絶対数が細っているわけです。

 以前の解説では、納付率の改善傾向を通じて「日本人は制度に向き合い、働き、納めている」という実態を取り上げました。今回の統計も、国民の納税・納付意識が維持されている点を裏付けています。しかし、今回の統計は、もう一歩踏み込んだ課題を浮き彫りにしています。問題は国民の「支える意思」の有無ではなく、社会全体の「支える人そのもの」が減っていくという構造的な避けて通れない事実です。

 今後、年金制度の持続可能性や健全性を評価するにあたっては、納付率の推移だけでなく、加入者数の変動、年齢構成、就業構造、そして根底にある人口動態を総合的に注視していく必要があります。人口減少が避けられない中で、「対象者の何%が納めたか」という達成率と同時に、「制度を支える担い手がどれだけ存在するのか」という実数の視点を持つことが、制度の未来を見通す上で一段と重要になっていきます。今回の統計は、「納付率」という単一の指標だけでは見えない、人口減少時代の社会保障制度の課題を浮き彫りにしたと言えそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)