今回のニュースのポイント
デジタル庁は7月27日、2月13日に開催した「アジャイル開発に関する有識者検討会」の議事要旨を公表しました。検討会では、小規模なパイロットプロジェクトを通じて課題を検証し、成功事例だけでなく、期待どおりに進まなかった経験も組織全体で共有する仕組みづくりが議論されました。行政システムを段階的に開発し、利用状況や現場の課題を踏まえて改善を重ねる手法を、組織として定着させることが狙いです。
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行政手続きのデジタル化が進む中、システムの開発や運用をめぐる基本的な考え方に見直しの動きが広がっています。
行政システムでは、あらかじめ仕様や成果物を定めて開発する手法が広く採用されてきました。一方、利用環境や要望の変化に対応するため、小規模な開発と改善を繰り返す手法への関心も高まっています。制度変更や社会動向の変化に伴い、従来の枠組みだけでは柔軟な修正が難しい側面もあることから、開発の進め方そのものを再整理する取り組みが求められています。
こうした背景のもとで導入・定着が検討されているのが「アジャイル開発」と呼ばれる手法です。
アジャイル(Agile)とは、英語で「素早い」「機敏な」を意味します。システム開発におけるアジャイル開発とは、すべての仕様を最初に固定するのではなく、必要な機能を段階的に開発し、利用状況や課題を確認しながら改善を繰り返す手法です。イメージとしては、スマートフォンのアプリが更新を重ねながら機能や使いやすさを改善していく形に近いといえます。利用者の声や実際の利用状況を踏まえ、柔軟に機能を調整できる点が特徴とされています。
デジタル庁が公表した検討会の議事要旨では、こうした手法を組織に定着させるための試行事業(パイロットプロジェクト)のあり方が主要な論点となりました。
有識者からは、大規模な新規開発案件に限定せず、既存システムの改修や内部向けのツールなど、取り組みやすい案件から実践することが有効だとの意見が示されました。具体的には、半年以内にリリースや検証の機会を設けられる案件を設定し、状況に応じて判断できる柔軟性を持たせることが望ましいとの意見が示されました。また、東京都の事例のように現場が参加しやすい枠組みを整えることや、「絶対にNGな条件」でなければ積極的にチャレンジを認める姿勢、熱意のある担当者を巻き込む工夫の重要性が挙げられました。
今回の検討会において特徴的なのは、失敗や課題が生じた場合でもそれを前向きに評価する姿勢が議論されている点です。
検討会では、パイロットプロジェクトが期待どおりの結果にならなかった場合でも、その原因や課題を「アジャイル開発採用基準ガイドブック(案)」などの改善に生かせるとの考え方が示されました。単に成功事例をつくることだけを目的にするのではなく、実践の過程で生じた壁や手戻りの要因を検証し、今後のルール策定や他案件への横展開に活かす姿勢が強調されています。
さらに検討会では、個別プロジェクトの経験を、組織全体の能力に変える仕組みづくりについて多角的な議論が行われました。
プロジェクトの責任者(プロダクトオーナー)同士が定期的にノウハウを共有する機会の設置、社内Wikiの活用、コミュニティの形成など、知見を共有・蓄積する取り組みが提示されました。あわせて、現場の担当者だけでなく上層部や周辺関係者も一緒に受講できる体感型の研修の導入や、生成AIを活用して解説記事や動画などのコンテンツを作成・発信する仕組みも提案されています。また、会計や調達を担当する部門との認識共有を図るため、あらかじめひな形や手続きのアナウンスを整えておく必要性も共有されました。
こうした開発手法が行政サービスへ広がれば、利用状況や現場の課題を反映しながら、機能や使いやすさを継続的に見直す余地が広がります。
システムを一度完成させて納品することをゴールとするのではなく、現場や利用者のフィードバックを受け止めながら段階的に改善を重ねるアプローチは、今後のデジタル行政の品質を高める上での重要な視点となります。今回の議論は、単に新しい開発手法を導入することにとどまらず、現場の経験や学びを組織全体で蓄積し、変化に適応し続ける体制づくりを目指すものと言えます。デジタル化の推進に向けて、システムそのものだけでなく、行政組織が持続的に学び改善を続ける仕組みを構築できるかが、行政DXを持続的に進める上で重要な要素となりそうです。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













