サンマの回遊ルートと漁場の変化を模式的に示したイメージ。親潮の張り出しや海洋環境の変化により、日本近海への来遊量が減少し、漁場が公海側へ移る傾向が続いている。(画像:イメージ/エコノミックニュース作成)
今回のニュースのポイント
国立研究開発法人水産研究・教育機構が公表した2026年度サンマ長期漁海況予報では、8月から12月にかけてのサンマの来遊量は昨年を下回る見通しとなりました。漁獲の中心となる1歳魚は昨年より割合が低く、魚体も小型化すると予測されています。背景には資源量の変動に加え、海洋環境や回遊ルートの変化があり、近年続くサンマ漁の構造変化を示す内容となっています。
本文
国立研究開発法人水産研究・教育機構は7月28日、2026年8月から12月にかけての「サンマ長期漁海況予報」を発表しました。予報によると、今漁期の日本の漁場へのサンマ来遊量は昨年を下回る見通しです。また、漁獲の主体となる1歳魚の割合や体重も昨年を下回ると予測されており、8月から9月にかけての主要な漁場は日本の排他的経済水域(EEZ)外である公海を中心に形成される見込みです。
今年の予報が厳しい数値となった背景には、事前の海洋調査で確認された資源量が低い水準にとどまったことがあります。
同機構が今年5月から7月にかけて実施した調査では、日本近海から東経180度付近(1区・2区)におけるサンマの推定分布量は42.9万トンにとどまり、昨年の109.9万トンを大きく下回りました。これは比較可能なデータが存在する2003年以降で、最も低い水準となります。
さらに、漁獲の中心となる1歳魚の体重も80グラム台~90グラム台が主体で、昨年に比べて小ぶりとなっています。漁期を通じて成長しても100グラム台~110グラム台にとどまるとみられ、魚体の小型化と資源量の伸び悩みが重なる形となっています。
今回の予報で特に注目されるのは、来遊量の減少に加えて「日本近海への回遊ルートや漁場がどう変化しているか」という海洋環境の影響です。
サンマは本来、冷たい親潮の流れに沿って千島列島から北海道・三陸沖へと南下してきます。しかし近年は、親潮の南限が例年に比べて北へ偏る傾向(北偏)が強まっているほか、道東沖に暖水塊が存在することなどで、親潮が日本の沿岸近くまで十分に張り出さない状態が続いています。
今年も親潮の沿岸への張り出しが弱く推移した場合、サンマの魚群は道東沿岸に近づかず、暖水塊の東側にあたる沖合(親潮第2分枝沿い)を通って南下しやすくなります。来遊量の減少に加えて、日本近海へ来遊しにくい海況や回遊ルートの変化も重要な要因となっており、日本のサンマ漁業にとって大きな課題となっています。
長期的なデータを見ても、この傾向は一過性のものではありません。同機構の資料によると、日本近海(1区)におけるサンマの推定分布量は2010年以降、低い水準から抜け出せない状況が続いています。また、1歳魚の小型化や西方への回遊開始の遅れ、漁場が沿岸から公海へと離れていく動きも定着しつつあります。
かつてのように「日本の沿岸で大量のサンマを漁獲する」前提が崩れつつある中で、サンマ漁業は単なる毎年の豊不漁に一喜一憂する段階を超え、海洋環境や資源配置の長期的シフトに対応した操業・流通体制への移行を迫られています。
秋の味覚として馴染み深いサンマですが、来遊量の減少や漁場の沖合化は、国内での水揚げ量や流通に直接影響を及ぼす可能性があります。もっとも、店頭での小売価格は水揚げ量だけでなく、燃油コストや冷凍在庫、他魚種の動向、消費者の購買意欲など複数の要素で決定されるため、現時点で価格を断定することはできません。しかし、今年の予報は秋以降の水揚げ動向や実売価格を見通すうえで重要な判断材料となります。
8月から9月にかけては公海を中心とした小規模な漁場形成が予想されており、10月以降に日本近海へどこまで魚群が近づくかは、今後の親潮の発達や海況の変化に大きく依存します。
水産研究・教育機構は9月以降、最新の海洋観測データや回遊モデルを反映した「サンマ中短期予報」を順次公表する予定であり、刻々と変わる海と魚群の動向を引き続き注視していく必要があります。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













