なぜ消費税を1%にするのか 目指すのは「給付付き税額控除」

2026年07月31日 07:09

画・コロナ・リストラ再加速。既に昨年の2倍超。赤字リストラが増加。外食で急増。

通勤する人々。政府は所得連動給付の導入を柱とする税・社会保障制度改革を進め、働くほど手取りが増える仕組みの実現を目指している。(資料写真)

今回のニュースのポイント

高市首相が示した飲食料品の消費税率1%化は、単なる一時的な減税ではなく「給付付き税額控除」への移行に向けた経過措置(つなぎ)です。日本の「純負担率」は中・低所得層で高く、全員一律の減税や給付ではなく所得に応じた給付とすることで、限られた財源を効果的に活用しながら「年収の壁」に伴う働き控えを緩和し、働くほど手取りが増える構造を目指します。消費税軽減から所得連動給付の本格導入に至る改革の狙いを解説します。

本文
 現在、日本の税・社会保険・給付制度は、消費税などの間接税、所得税や住民税などの直接税、公的社会保険料、各種の現金給付制度がそれぞれ個別に運用されています。これらの制度が互いに分断されているため、国民が支払う負担の総額と受ける給付の全体像が可視化されにくく、特に中・低所得者層にとって実質的な生活上の重荷となっています。税金と社会保険料が別々に徴収され、各種給付も個別の制度ごとに支給される構造が、現行制度の大きな課題とされてきました。

 この構造的課題を顕著に示しているのが、政府が示した一次資料における「純負担率」の国際比較データです。純負担率とは、税と社会保険料の合計負担額から現金給付額を差し引いた実質的な純負担額を、世帯年収で割った割合を指します。日本の現役勤労者世帯、とりわけ中・低所得層における純負担率は、米国、ドイツ、フランスといった主要国(G3平均)と比較して高い水準に位置しています。例えば、夫婦共働きで子ども2人の世帯年収540万円のモデルケースでは、児童手当などの給付を受けているものの、社会保険料や所得税、住民税に加えて消費税の負担が重くのしかかり、諸外国に比べて手取り収入が残りにくい構造になっています。さらに、特定の年収を超えると社会保険料の負担発生などによってかえって手取りが減少する「年収の壁」が存在し、就労調整や働き控えを招く原因となっています。

 こうした負担の偏重と働き控えを生む構造を見直すために、高市首相が改革の本丸として掲げているのが「給付付き税額控除」の導入です。その中核となる仕組みが、令和11年4月の本格導入を目指す「所得に連動したきめ細かな給付」です。新制度では、税や社会保険料の負担と現金給付を一体的に捉え、個人の所得状況に応じてきめ細かく給付額を決定します。一定の勤労所得に応じて給付額が段階的に増え、高所得になるにつれて漸減・消失する設計とすることで、働くほど手取りが増える環境を整えます。中・低所得層の負担を直接的に和らげると同時に、「年収の壁」に伴う働き控えを緩和し、就労を促す狙いがあります。

 ここで「なぜ全世帯一律の減税や給付ではないのか」という点が極めて重要になります。全員に均等な支援を行う一律方式では、高所得者にも同様に財源が配分されるため、真に支援を必要とする層への還元が薄まってしまう課題があります。所得に連動した給付方式を採ることで、限られた財源を中・低所得層へ効率的かつ集中的に投入することが可能となります。また、単に現金を配るのではなく、就労所得の増加に応じて給付が漸増・調整される設計にすることで、「年収の壁」に伴う働き控えを緩和し、就労を促しながら手取りの増加につなげることを目指すためです。

 次に焦点となるのが、「なぜいま消費税率を1%に引き下げるのか」という点です。今回の施策の本質は減税そのものが目的ではなく、所得連動給付を本格導入するまでの「つなぎ」にあります。個人や世帯の所得状況などを正確に把握し、個人の状況に応じた精密な給付システムを全国で構築するには、自治体や税務当局の準備など一定の期間を要します。一方で、足元の物価高や税・社会保険料負担に苦しむ人々への支援を遅らせるわけにはいきません。そこで、制度構築までの過渡的な措置として、短期間で広く負担軽減効果を届けられる飲食料品の消費税率1%化が選ばれました。事業者のシステム改修期間を踏まえ、税率をゼロではなく1%とすることで令和9年4月からの早期実施を可能にし、同年6月からの先行給付と合わせて本格導入までの空白を埋める役割を果たします。

 令和11年4月に所得連動給付が本格導入される段階で、飲食料品の消費税率は元の8%へと戻される計画です。制度設計では、税率復元後も所得連動給付を合わせることで中・低所得の勤労者層の手取り増加を目指す考えです。その先の「給付付き税額控除」については、給付と税額控除の組み合わせを含め、制度の将来像を引き続き検討する方針です。政府は、将来的な感染症や大災害などの緊急時にも柔軟かつ迅速に支援を実施できるセーフティネットの構築を目指しています。今回の消費税1%化は一時的な消費支援にとどまらず、日本の税・社会保障制度の見直しにつながる制度改革のスタートラインとして位置付けられています。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)