今回のニュースのポイント
政府の2027年度予算編成を巡り、各省庁の概算要求総額が一般会計で初めて130兆円を超える見通しと報じられています。2026年度の122兆円から大きく膨らみ、新たな成長投資枠や国債費、社会保障費などが背景にあります。しかし、「概算要求130兆円超」は政府が130兆円超の支出を決めたという意味ではありません。各省庁が必要と考える予算を財務省へ求める予算編成の「入口」です。概算要求はこの後、財務省の査定、政府予算案の決定、国会審議を経ます。巨大な総額だけでなく、各省庁が何に予算を求め、それが査定を経てどこまで残るのかを見ることで、来年度の政府が何を優先しようとしているのかが見えてきます。
■ 「130兆円超」という巨大な数字の正体
「来年度予算の概算要求が初めて130兆円を超える見通し」――。こうしたニュースを目にすると、政府が来年度に130兆円以上の支出を決めたかのように受け取られるかもしれません。しかし、報道されているこの数字は、現時点で政府の支出として決定した「予算」ではありません。
共同通信の報道によると、2027年度の概算要求総額(一般会計)は2026年度の122兆円から拡大し、4年連続で過去最大を更新して初の130兆円超となる見通しとされています。新たな成長投資枠で上限を設けない運用とすることや、防衛省が過去最大となる約8.9兆円を要求する見通しであること、高齢化に伴う社会保障費の自然増として約3,900億円増を見込むことなどが背景に挙げられています。ただし、8月末の概算要求締め切り前であり、これは各省庁の正式な要求額が確定・公表されたものではなく、現時点での報道に基づく見通しです。
■ そもそも「概算要求」とは何なのか
そもそも「概算要求」とは何でしょうか。国の予算編成は、毎年夏に各省庁が翌年度に実施したい政策や事業に必要な経費を取りまとめ、財務省に提出することから始まります。これが概算要求です。
提出された要求は秋から冬にかけて財務省による査定と各省庁との調整を受け、年末に政府案(閣議決定)として一本化されます。その後、年明けの通常国会で審議され、可決・成立して初めて正式な「予算」となります。つまり、概算要求額は「政府予算案」でも「成立した予算」でもなく、ましてや「実際の支出額」でもありません。予算編成という長いプロセスのスタート地点で持ち寄られた「見積もり」の段階にすぎないのです。
■ なぜ要求額は大きくなるのか
では、なぜ概算要求の段階では数字が大きく膨らむのでしょうか。今回のケースでは、成長投資枠について要求上限(シーリング)を設けない方針が採られていることが要因の一つとして報じられています。
加えて、高齢化に伴って構造的に増え続ける社会保障費や、金利上昇に伴う国債の利払い負担(国債費)、防衛力の強化に向けた経費など、歳出を押し上げる要因が重なっています。概算要求の段階では、各省庁が自らの担当する政策課題に対応するために必要な経費を積み上げるため、要求総額は膨らみやすい性質を持っています。そのため、要求額の大きさだけをもって最終的な財政規模や政策の妥当性を評価することはできません。
■ さらに分かりにくい「事項要求」の存在
さらに、概算要求のニュースを見る際に注意が必要なのが「事項要求」の存在です。今回の報道でも指摘されているように、防衛関係費など一部の主要政策では、現段階で具体的な金額を明示せず、事項のみを要求する「事項要求」が含まれるケースがあります。
予算編成の過程で内容や必要額が具体化されるため、「130兆円超」という要求総額だけでは、すべての政策要求の規模を把握できるわけではありません。年末の予算案決定に向けた調整のなかで、これらの内容や必要額が具体化され、査定されていきます。
■ 「130兆円」と現在の137兆円は何が違う?
ここで、現在実際に動いている国の財布(予算)のデータと対比してみると、予算と支出の性質の違いがより鮮明になります。財務省が公表した2026年度6月末時点の「国庫歳入歳出状況」によると、2026年度一般会計の「歳出予算現額」は137兆6,017億円余りとなっています。
「概算要求見通しの130兆円超」と「現在の歳出予算現額の137.6兆円」という二つの数字が並ぶと混同しがちですが、これらは全く異なる概念です。130兆円超は来年度の「要求見通し」であるのに対し、137.6兆円は2026年度の執行段階における「歳出予算現額」で、当初予算額そのものとは異なり、繰越額なども反映した予算の現在額です。さらに同資料によると、6月末時点での実際の「支出済歳出額」は約39.0兆円で、執行割合を示す支出歩合は28.3%となっています。「要求する金額」「予算として用意される金額」「実際に支出される金額」は、それぞれ異なる段階にあります。
■ 国の財布では何に大きなお金が動いているのか
この財務省資料から現在の国の歳出予算現額(約137.6兆円)の内訳を省庁別に見ると、厚生労働省が約36.5兆円、財務省が約36.3兆円、総務省が約23.2兆円、国土交通省が約10.0兆円、防衛省が約9.9兆円などとなっています。
ただし、ここでも数字の読み取りには注意が必要です。たとえば財務省の約36.3兆円には国債の償還や利払いに充てられる国債費などが含まれており、総務省の約23.2兆円には地方自治体に配分される地方交付税交付金などが含まれています。各省庁の予算額は、そのまま各省庁が自らの行政事業で直接消費する金額を意味しているわけではありません。
■ 「130兆円」より見るべき中身とプロセス
このように見てくると、概算要求のニュースに接する際に重要な視点が見えてきます。見出しに躍る「過去最大」「初の130兆円」「大幅増」といった総額の大きさだけに目を奪われるのではなく、①各省庁が何に予算を求めているのか、②どのような理由で増額を提示しているのか、③年末の財務省査定を経て何が削られ何が残るのか、④最終的な政府予算案の規模はどうなるのか、⑤その財源を税収と国債でどう賄うのか、という「中身」と「その後のプロセス」を追うことです。
■ 予算編成はこれからが本番
8月末に各省庁からの概算要求が出揃うと、2027年度予算編成はいよいよ本格化します。秋から冬にかけての査定を通じて、政策の優先順位が吟味されていきます。
「130兆円超」という数字は、来年度の国の支出が決定したことを示すものではなく、各省庁が2027年度にどの政策へ予算を求めるのかが示される予算編成の出発点です。概算要求のニュースを読む際は、総額だけでなく、これからの査定過程と政策の中身を見ることが重要です。(編集担当:エコノミックニュース編集部/Editorial Desk: Economic News Japan)













